第51話 破壊成る



 くるりとベルトの体が回転する。


 下段後ろ回し蹴りフグトルネード。ベルトの靴裏が『不破壊』のすねを直撃した。




 くるり――――




 さらにもう1回転。


 裏拳打ちバックハンドブロー




 くるり――――




 さらに回転。




 ローリングソバット。




 くるり――――




 ローリングエルボー。




 くるり――――




 今度は回転系の技ではなかった。


 都合4度の回転で十分に遠心力を得て、真っ直ぐに突き出したのは掌底打ち。


 『不破壊』の顔面を打ち抜いた。




 高速で放たれるベルトの技と『不破壊』の肉眼では捉えられない。




 (嗚呼、こういう技を打たれたのだな……)




 打たれた後に想像することしかできない。


 だが、徐々に想像力は具現化していく。




 (次に来る打撃が読めてくる)




 手刀が『不破壊』の肩口に叩き込まれた。


 振り落とされた手刀が硬く閉じられ――――


 今度は上に跳ね上げられアゴを叩く。




 ――――読めていても反応できなければ意味がない。




 (――――そうではない!)  




 するりと『不破壊』は腕を伸ばす。


 奇跡か? 必然か?


 『不破壊』の豪腕はベルトを捕縛した。


 ベルトの首裏を片手に握った。




 (この好機! 逃がさぬ!)




 ベルトを一気に引き寄せ緊急避難クリンチ


 体を抱きしめ相手の攻撃を伏せぐ拳闘術の技。


 しかし、これは拳闘ではない。組み付いた状態で危険な投げ技も使える。


 当然、『不破壊』もそのつもりで引き寄せようとした。


 だが――――




 不意に抵抗していたベルトの圧力が消える。


 スッカっと空振りとしたかのような感覚が『不破壊』を襲う。


 行き場を失った自身の力が『不破壊』のバランスを大きく崩し――――


 それと同時にベルトの腕が『不破壊』の腕に巻きつかれる。




 関節技サブミッション




 真っ直ぐに伸びた腕。その肘部分にベルトの腕が添えられ――――


 抵抗する間もなく――――




 ゴッキッと何かが折られた音が闘技場に響いた。


 腕が折られると、人は思考が痛みに支配される。


 『不破壊』と言えど、その例外ではない。


 折られた腕を押さえ、痛みに耐えるように前のめりになってく――――




 そのタイミングだ。




 無防備になった『不破壊』の顔面を下からベルトが蹴り上げた。


 防御も回避もできるわけもなく――――


 ついに――――




 『不破壊』が破壊された。



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