第22話 再会 そして復活の……


 ベルトたちが下へ下へと駆け抜けている時間。


 一方で救出を待つ勇者たちも動いていた。 


 上へ上へと向かい――――




 「――――」と勇者カムイが足を止めた。




 「どうしたの?」とマシロをはじめて、パーティの全員が勇者の指差す方向を凝視する。


 当然だが、何も見えない。 ただ、暗闇が広がっているだけ……そのはずだった。


 視界の利かない暗闇の中、何かが高速で動いている。


 その影の正体は彼らの見知った者の動き。




 (しかし、でも、けれども――――)




 でも、彼らは否定する。


 そんなはずはない……と。


 彼が、自分たちの元に戻ってくるはずは……




 「待たせたな、お前ら」




 それは、かつて彼が仲間になった日の言葉。


 彼――――ベルト・グリムが――――




 「どっ! どどどうしてベルトがここにいるの!?」とアルデバラン。


 「貴方、何してんのよ!」とマシロ。


 目を白黒させ、口をパクパクと動かしているシン・シンラ。




 そんな彼らに対してベルトは――――




 「へっ……お前等、酷いツラしてるぞ。ほれ受け取れ」




 無造作に雑嚢を投げ渡した。


 中には兵站はもちろん、毒消し、薬草、万能薬、それら必要品に加えて高価なポーションが詰まっていた。


 彼らは、もう何も疑わなかった。


 本物のベルトが来てくれたのだ。それ以上、何を疑う? 何を疑問に思う?




 どうして、年幅も行かない少女をお姫様抱っこをしている事か?




 そんな事はどうでもいいじゃないか。 そう、彼が――――ベルトが帰ってきたのだ。


 彼は少女を下ろし、カムイを対面した。




 「少し遅れちまった。でも、何とか間に合ったみたいだ」




 そんなベルトの言葉にカムイは――――




 「――――助かった。ありがとう」




 無口な彼が珍しく、はっきりとした口調で礼を言う。 


 カムイの声は、酷くガラガラにしゃがれていてた。まるで別人の声のように思えた。


 そこから、どれほど彼が疲労したのかベルトは感じとった。


 だからだろうか? 


 ベルトは遅れてしまった。




 ――――本当に勇者カムイが別人であると言う事に気がつくのが――――




 「がっ……何を?」




 ベルトのわき腹にカムイの聖剣が――――否。


 カムイのフリをしていた男の剣が突き刺さった。




 「わざわざ、殺しに行く手間が省けたと言うものよな。カッカッカ……」




 笑う勇者。


 いや、勇者と同じ顔を持つ誰か?




 その場にいたアルデバランも、マシロも、シン・シンラも、ましてメイルも、何が起きたのか理解が出来ず動けなかった。


 そんな中、ベルトは思い出す。


 かつて、自身の腹部を切り裂いた旧敵の存在を――――




 「お前、まさか……どうして?」


 「さすが、暗殺者。ワシの正体が分かったか……。なぁに簡単な事よ。貴様が受けた『呪詛』を誰よりも浴びた男は誰だ?」




 ベルトは思い出す。


 勇者と魔王の戦い。


 それは三日三晩、不眠不休の戦い。


 ならば、自分よりも魔王の『呪詛』を浴びていたのはカムイではないか?




 「貴様、『呪詛』の力で勇者の体を乗っ取ったのか! !」





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