第10話 ベルト再始動


 これまでの経緯。


 ベルトは、自分を訪ねてきた義妹――――メイル・アイシュ。


 彼女は、冒険者を目指すために唯一の親族であるベルトを訪ねてきた。


 しかも、ベルトの腕には『呪詛』という呪いが込められていることを見破り、治療を始めてくれた。


 長い治療を見越して、ベルトは店の手伝いを条件に居候を提案した。




 そして、現在。朝の家族会議。


 議題は、ベルトを訪ねてきた義妹について。




 「しばらく、店に住ませてもいいか?」 




 ベルトはそう言うと父親と妹のノエルは――――




 「いいんじゃないか?」


 「うん、いいと思うよ」




 あっさりと許可を出した。


 しかし――――




 「なんで、平然と受け入れてのよ」




 朝からグリム家にマリアのツッコミだけが響いた。




 「妹が増えるって、てっきりアンタの父親がよそで子供を作ったかと思ったじゃない!」


 「お前、また人の父親の事を――――」


 「ハッハッハ……マリアさんもベルトの妹になりたければ、母君を紹介しなさい。1週間の期間をくれれば君をベルトの妹してあげ……ごめんなさい」




 マリアに睨まれて、初老の男性は「ご褒美ありがとうございます」と謝罪した。




 「家族が増えるのはいいわよ。他人である私が口を挟む問題ではないと思うは……でも、復帰するってどう言う事よ? 店はどうするの?」




 ベルトは冒険者復帰を口に出していた。


 もしも、呪詛の浄化が完了する前にメイルが何かあったら、自分の腕は完治しない。


 ならば、自分も冒険者として復帰。メイルを護衛役になろうとしているのだ。




 「その事なんだが……冒険者をして復帰をしながらも店は続けて行きたい」




 マリアは驚いた表情を見せるも一瞬だけ。ため息を交じわせながら――――




 「話なさいよ。貴方の事だから、何か案があるんでしょ?」


 「その前に、初めて会った時の事……お前が考えていた新機関。その顧問の話はまだ生きているのか?」




 マリアが提案している冒険者ギルドを経由せず、商人ギルドが直接的に冒険者と契約を行うシステム。


 その契約第1号としてマリアはベルトに契約交渉を開始した。


 それを断ると、機関の顧問として交渉をしてきたのだった。




 「もちろん! なに? 急に! やる気になってくれたの?」


 「あぁ、月に2回の戦闘訓練で年収はSライセンス冒険者の2倍……だったな?」


 「そうよ! ビシバシ鍛えて頂戴! ……もしかして、そのお金で人を雇うつもり?」


 「あぁ、俺も依頼がない日は店に出る。ノエルもメイルも手伝ってくれと言っているから経営を続けていくのに問題はないはずだ」




 ベルトの提案にマリアは考え込む。




 「貴方の店の2階に、新しい妹……メイルちゃんを住ませる予定なのよね?」


 「あぁ、そのつもりだ」


 「確か、もう1部屋あったわよね。 そこにもう1人住ませる事は可能なのかしら?」


 「問題はないと思う。 なんだ? アンタが住むのか?」


 「私じゃないわよ。1人雇ってほしい子がいるのよ」


 「ん? どう言う事だ?」


 「顧問としての役割としての話だけど、暫くは隊長候補の1人を集中して鍛えてほしいのよ」


 「なるほど。住み込みで働かせる代わりに、時間が空いた時に鍛えればいいって事だな」




 しかし、「いいえ」とマリア。


 ニヤリと笑いながら、こう続けた。




 「時間が空いた時なんて甘い事を言わず、時間が許す限りの指導をお願いするわ。そのための貴方の店に住ませるのよ」




 ・・・


 ・・・・・・


 ・・・・・・・・・




 ベルトは朝食を取り終えると店に向った。


 店に入るとドタドタと慌しくメイルが降りてきた。




 「どうでしたか?」


 「大丈夫だ。君は、ここで住める事になった。俺も冒険者として復帰する」




 「よかった」とメイルは胸を撫で下ろす。




 「私、義兄おにいさんと一緒に冒険する事が夢だったんですよ」




 「……ん? そうか」とベルトは若干の違和感を持ったが、すぐに忘れた。




 「それじゃ、今日は町だな。メイルは冒険者ギルドで正式登録。俺は復帰登録だな」

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