9月


2019年9月1日 「命の恩人は……」


目を開けると白衣を着た男が俺を見下ろしていた。「ガス漏れですって。途中でガスの供給が止まらなければ命も危なかったですよ。滞納しててよかったですね」俺は肩を落とした。貧乏ってのは自殺すら邪魔するらしい。




2019年9月8日 「火をつけろ!」


「俺のリボルバーが火を吹くぜ」彼は虚空に向け銃を構え、引き金を引いた。銃口に火が灯る。リボルバー型のライターを使ったひとり遊び。その様子を撮影したこの映像が世に出れば、彼の顔からも火が出ることだろう。




2019年9月15日 「彼なりのアイラブユー」


「月が綺麗ですね」精一杯の勇気をさりげなさに包み隠して彼が言う。「そう?」からかってみたりして。肩を落とした彼の手をそっと握る。「ウソ」月の光に照らされた彼の真っ赤な耳が妙に愛おしい。「私もそう思う」




2019年9月22日 「男たちの悲しき性、そして無駄な抵抗」


超極小センサーが傾きを検知し、スカート内部が見えないように裾を稼働させる「絶対防御スカート」が発売され瞬く間に大ヒットした。だが街で見ることは少ない。調査してみると、購入者の八割が男だったと判明した。




2019年9月29日 「跡地」


出張から帰ってくると見慣れぬ空き地があった。はて、ここになにがあっただろうか。いくら考えても、そこがなんの跡地かは一向に思い出せなかった。まあいい。とにかく家に帰ろう。そこで気付いた。あれ、俺の家……

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