二通目
また会いたい。
そう思っていた私のもとに、あなたは次の日も来てくれましたね。
宣告された余命の最後の日も真っ青な空は綺麗でした。
私はあなたの絵を何度も見返しては病室の外へあまり出られない体を恨めしく思ったものです。
父や母、姉が病院へ訪れてくれましたが幸いなことに私は発作を起こすこともなく、静かな一日を過ごせました。
そうして今日が終わると思っていたときに、あなたが病室に来たのです。
とても驚きました。
あなたにとって、私は昨日偶然出会っただけの人間に過ぎないとばかりに思っていましたから。
スケッチブックとカバンを抱えて飛び込んで来たことには目を丸くしてしまいました。
嬉しそうだったから、とあなたはまた一枚、絵をくれましたね。
学校から病院へ来る途中にある商店街の絵でした。
病院からは少ししか離れていないのに、私はそこへ行ったことがありません。
あなたは少し驚いた顔をして、カバンの中からお菓子を出して、内緒だよと笑うと私に分けてくれました。
看護士さんに黙って一緒に食べましたね。
ほとんどお菓子を食べたこともなかったので、あの味は今も忘れられません。
すごくすごく美味しかったです。
面会時間を過ぎて看護士さんに追い出されながら、あなたはまた明日と手を振ってくれました。
私もそれに手を振り返しました。
けれど会うことは叶わないのではと覚悟をしていました。
夜眠っている間に、そのまま死んでしまうのではと恐れもしました。
しかしそれは杞憂で終わり、翌日の朝、無事目を覚ますことができたときのあの喜びは言葉で表現できないものです。
家族も皆、私の顔を見て泣いてしまいました。
生きていてくれてありがとう。
母の言ってくれたその言葉は私の宝物です。
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