ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔチビヘン🔮
25.不明
『〈ログイン〉』
約24時間後、チビ助は再びワールドゲームの世界へとログインした。
ブシャー
偶然にも目の前に滞空していた小型のドローンから水の魔法が迫る。
顔に当たるギリギリのところで、魔力を込めた右手にてそれを掻き消す。
[申し訳ありません。これは誤射であり敵意はありません。当機は消化のための運営によるドローンです]
宙の半透明青色のボードに表示されるテロップが、敵でないことを示した。
『消火…』
チビ助は周りを見回す。
サイトータン地区の大部分が、見るも無残な姿に全焼していた。
ネットの情報通りだ。これは、運営やりすぎである。
それにしても、一つ不可解なことがあった。チビ助は、別れた後、もしかして凪もこの町に来ているかもと思い、緊急クエストが発生した時にツイッタアでメッセージを送ったのだが、未だに返信がない。
ワールドゲームのフレンドリストからチャットで送ったメッセージも同様、既読すらつかない。いつものチビ助なら、未読無視許さんと憤慨していただろう。
だがチビ助は、凪にはこっそり位置がわかる発信器を付けていた。おっと勘違いしないでほしい。信用してないからではなく、一流の暗殺者として、なるべく多くの情報を持つために色んな人に発信器を付けているのだ。無論、ゲームだからだ。現実ではそんなこと絶対にしない。
そして未だにオンライン状態の凪の発信器は、[範囲外]を示していたのだ。
暗殺戦闘系と探知や技術系に極振りしているチビ助が、更にゲーム内で改良に改良を重ね、高レベルのエンチャントまで施した発信器。計算上、範囲外にはならないと思っていた。これ程の性能ならば、全てのエリアまで届くだろうと考えていたのだ。
それなのに、青いボードで[範囲外]を突きつけられた。
百歩譲って仮に本当に範囲外だったとしても、僅か24時間で始まりの町からそれだけの距離を移動できるとは考えにくかった。確認はしていないので定かではないが、最低でもその数十倍の時間は必要になる筈だった。
下手したらこれは、文字通りの″行方不明″なのではないだろうか。
『不可解だ』
チビ助は焼け焦げた町を眺めながら、静かに呟いた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『おいおい、よわよわ凪おのやつ、ずっとオンラインだぞ!暇人かよ!ww』
ウィンドギルドのテーブルを囲み長椅子に座って談笑していた佐藤たち一行の勇者佐藤が、フレンドリストを見てつっこんだ。
『おい佐藤、あまり凪を馬鹿にするんじゃない。それに廃人は暇じゃない』
正義感の強い男、聖騎士明智が佐藤の横暴な態度に注意する。
『もぐもぐ佐藤さん、静かにしてくださいよむしゃむしゃ』
昼食を食べている結衣に、佐藤は言い返す。
『ああ?俺は勇者だぞ?勇者である俺に逆らうのか?』
『もぐもぐもぐもぐ』
『ああ!何言ってるかわからねえ!』
佐藤がキレて立ち上がり叫んだ。
『あのですねぇ、勇者だからって偉いわけじゃないんですよ。レベル2の私とレベル13の佐藤さんも平等なんですよもぐもぐ』
『何だと!?レベルが高い方が偉いに決まってんだろ!強いんだから!』
そう叫んだ佐藤の肩を、背後から誰かが掴む。
『誰だよ!?』
佐藤は後ろを振り返る。そこには、佐藤よりも少し背の低い、暗色のローブを纏った青年がいた。
『先ほど気になる言葉が聞こえてな。話をしに来たのである』
『何だと!?俺は驚きのレベル13だぞ!先に名乗るのが礼儀だろ!』
『そうか。ならばお主が先に名乗るのか?』
『は?何でだよ?』
青年は、佐藤に宙のステータスボードを見せる。
➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖
[レベル]30
➖➖➖➖➖➖➖➖➖➖
横からひょいと覗いた結衣が言った。
『へーすごいですねぇ』
『す、すげえ』
明智も感嘆の声を漏らす。佐藤はそれが気に食わなかったのか、再び喚きだした。
『う、嘘だろ、嘘つくなよ!30はありえねえ。少なくともトッププレイヤーでないと!このボード偽物だろ!本当に30って言うなら証明くらいしてみせろよ!』
佐藤がアイテムボックスから剣を取り出して、青年に斬りかかった。
青年はその刃をいとも容易く片手で静かに受け止める。
『な、何だと!?』
『さて、続けるであるか?』
青年は佐藤に殺気を向ける。佐藤は思わずたじろぐ。たじろいで段差に足を引っ掛けてそのまま後ろに転んで更にたじろいでいたが、気にしない。
『くっ。は、話くらい聞いてやる…』
佐藤はたじろぎながらも不服そうにそう言った。それを聞き、青年は空いていた近くの席に座る。
『さて、本題に入ろう。俺の名前はチビ助。凪というプレイヤーに関して、何か知っているであるか?』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます