October 3.2021
社説
イーストシティにおける原因不明の暴動について様々な憶測が飛び交う中、ある発言が注目を集めている。デュヴァリエ政権下の独裁時代にハイチからアメリカに亡命した男性、ルイス(仮名)氏の言葉だ。
ルイス氏はイーストシティで暴動に巻き込まれ、命からがら逃げ延びたという。氏はその際暴徒に腕を噛まれ、「映画のゾンビを思い出した」と話した。
これが報道されたことで、暴徒の症状をブフェ・デリラントや狂犬病等と関連付ける識者の発言を差し置いて、一部で「ゾンビ病」と呼ぶ動きが活発化。不謹慎だと発言を慎む呼び掛けも出てきており、波紋を広げている。
今やゾンビは映画やビデオゲーム等の影響で人を喰う腐った死体との印象が強いが、もとはハイチが起源の呪術で作られる存在だ。それは人としての意思を奪われ術者の言いなりに動くだけにされた人間で、他者を喰うようなことはないという。
だがフロリダの暴徒の挙動に一定の傾向がなく支離滅裂であることを鑑みると、皮肉にも本来のゾンビに近いといえるのかもしれない。
独裁者フランソワ・デュヴァリエは、自らヴードゥー教の死神ゲーデの扮装をし、トントン・マクートなる秘密警察を組織して国民に拷問や虐殺をくわえ、宗教を悪用した恐怖政治を行なった。ヴードゥーでは、ゾンビはゲーデの力で作られるとされる。
悲劇に乗じた無神経な発言が、ルイス氏や被害者の方々の心傷を刺激しないことを祈るばかりである。
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