第48話 作戦会議

「俺はBチームに入る。逃げてりゃいいんだろ」

カカがめんどくさそうに言った。

「あら? 協力するのかしら?」

「そのにやにやした顔止めろ!

今だけだ!

そのチームってやつに入らなくても、どうせ協力するような形になるんだろ。

人数が少ないから」

カカはため息をついた。


今、化け物との戦っている人は、危なくなったら逃げるという姿勢をとっている。

そのため、一度に大勢の死者が出るというような状況は起こっていない。

だが、確実に戦力が削られているのは明らかだった。

「このままだと全滅する!

一気にたたくしかない!」

ララが叫んだ。全員が頷く。

「俺たちBチームが時間を稼ぐ!

Aチームもサポートしてくれ!

その間に他の人で作戦を考えろ!

戦いながらじゃ、いいアイデアが出ないだろ?」

Bチームにいる、ルルという男がララに言った。

「了解!」

ララは叫ぶと、ナナやケケ、そして私には名前の分からない人を2人呼んだ。なぜか私も呼ばれた。

「あなた、機転が効くんだって?

食堂での試練で活躍したってナナから聞いたよ」

「そんな活躍したってほどじゃ……」

私はうつむいた。

「何でもいいから、気づいたことを言って」

ララの声は切迫している。私達の作戦を立て終わる時間が遅くなればなるほど、犠牲者の数は増える。

ナナが早口で言う。

「あの化け物の手は何回切っても再生するの。手が伸びてるときは胴体と手の間ががら空きになるけど、他の手で攻撃される恐れがあるわ。

なんでか分からないけど、胴体から馬とかキリンの足が出てきたり、ゴリラの腕が生えてたりしているわ」

「あの化け物は異様だよ。一度に複数の動物には変われないはずだもん。そういうルールなのに……。

変な形になってるのは、ルールを破ってるからだろうね。細胞が壊れてるんだよ」

一つ思い付いたことがあった。

「化け物は再生しているんじゃなくて、新しく生やしてるんじゃないの?」

「ネネ、どういう意味であるか?」

「私はヒトが食べられた後に、化け物の体からヒトの足が生えたのを見た。もしかしたら、化け物は食べたものを自分の体から生やせるのかも知れない」

「なるほど、無限にできる再生じゃなくて、『食べたものの数の分だけ』という条件がつくのであるな。

そうだとしたら、限界が来るまで、化け物の体を傷つければいいのである!」

「待って!」

その場にいた女性がケケの発言を止めた。

「あの化け物は数えきれないほど食べてる!

化け物の限界が来る前に、全員が生きていられるかな……」

ケケは沈黙した。

しばらく次の意見は出ない。


「ああああああ!」

女性の叫び声が聞こえてくる。

「まだなのか!?」

ルルが叫んだ。

「ごめん、あと少し!」

ララは返事をする。その声には焦りがにじみでている。

「幸い化け物の知能は高くないのである!一斉に近づけば、全員を捕まえようとしてくるのである」

「じゃあ、何人で近づけばいい?本体の戦力をできるだけ削がなきゃ……」

ララは考え込む。

辺りを見回すと、残っているのは後、14人。

「みんなで闇雲に攻撃したって意味がない。どうする……?」

ララは結論を出せていなかった。


「おい!」

ルルが叫ぶ。その声調が、今までと少し違った。

声のした方を振り向いた時、大きな手が迫って来るのが見えた。

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