いつかつながる世界

@yoshitowell

始まり

 ぼんやりと今、目に映る状況を確認する。頭が回らない状況の中、目の前には血溜まりと二つ倒れている人がいた。母さんと妹だ。錆びた機械のように動かない首をひねるともう一つ横たわる人がいた。兄さんだ。今この状況はというと、俺の目の前にいる男、父さんがすべて引き起こした。つまり、父さんは家族三人を殺したのだ。多分包丁で。

 逃げようなどとは思えなかった。そもそも体が動かない。腹が焼けるように痛い。俺も切り付けられたからだ。でも父さんは俺を殺さなかった。呪詛のような言葉を俺に浴びせ続ける。言わんとしていることはわかっていた。父さんは俺が壊滅的に嫌いだった。殴られることなど当たり前だった。それはもう虐待とい言っても問題のない行為も沢山された。

 俺はこの後起こりうる結果を待った。

 ピーンポーン。とインターホンが鳴った。どうやら誰か来たようだ。大体誰が来たのかは予想はついている。父さんは怒鳴ることを止めた。

 ピーンポーン。ともう一度インターホンが鳴る。

 父さんは一言だけ俺に言った。

「お前のせいだ」

 ドスッと何かを刺す音が聞こえたと思った後すぐに重たいものが倒れる音がした。

 父さんは自分を刺して自殺したようだ。

 ドタドタドタ! と廊下をあいつが駆けてくる音がした。

「――! っ――、――!」

 正直何を言っているのかわからないぐらい俺は衰弱していた。薄れゆく意識の中、不意に頭にの中に声が響いた。

“こっちに来るか? それともこのまま留まるか?”

 血を流しすぎて、意識も朦朧としているこの状況で突然響く声に驚くこともできず、ただ尋ねた。

“そっちに行ったら世界は変わるか?”

 そう聞くと、その声は“ああ、間違いなく”

 これは悪魔の囁きだ。この悪魔は中身を何も喋っておらず、俺にとっても何のメリットも説明はなかった。普通そんなこと胡散臭くて聞いちゃいないが、この死にかけという状況下、まともな判断はたぶんできない。

“分かった。俺をそっちに連れて行ってくれ”と俺は答えた。

“了解した”

 たった一言告げてただけで、もうその言葉は聞こえてこなかった。ゆっくりと、寒気や気持ち悪さが止まらなかった先ほどとは違い、深い闇に飲み込まれるように意識を手放した。

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