理想郷の警官

日本怪文書開発機構

資料集

警察官職務執行法

(この法律の目的)


第一条 この法律は、警察官が警察法に規定する個人の生命、身体及び財産の保護、犯罪の予防及び鎮圧、公安及び治安の維持並びに他の法令の執行等の職権職務を忠実に遂行するために、必要な手段を定めることを目的とする。

2 この法律に規定する手段は、前項の目的のため必要な最小の限度において用いるべきものであつて、いやしくもその濫用にわたるようなことがあつてはならない。


(質問)


第二条 警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して何らかの犯罪を犯し、若しくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者又は既に行われた犯罪について、若しくは犯罪が行われようとしていることについて知つていると認められる者を停止させて質問し、その身体について凶器、薬物等を所持しているかどうかを検索し、身元の証明を求めることができる。

2 その場で前項の質問及び検索をすることが本人に対して不利であり、又は交通の妨害になると認められる場合においては、質問し、または検索するため、その者に附近の警察署、派出所、駐在所又は警ら車に同行することを求めることができる。

3 前二項に規定する者は、答弁及び検索について、正当な理由なくして、これを拒むことができない。


(拘束)


第二条の二 前条の規定によつて質問をした警察官は、答弁及び検索を拒む者、若しくは服装、所持品の形状、周囲の状況その他の事情に照らし、拘束対象者に該当すると疑うに足りる相当の理由がある者があるときは、拘束対象者を拘束することができる。

2 警察官は、前項の規定により拘束した者については、その身体について凶器、薬物等を所持しているかどうかを検索し、身元の証明を求めることができる。

3 第一項の規定による拘束は、七十二時間をこえてはならない。但し、引き続き拘束することを承認する簡易裁判所(当該拘束をした警察官の属する警察署所在地を管轄する簡易裁判所をいう。以下同じ。)の裁判官の許可状のある場合は、この限りでない。

4 前項但書の許可状は、警察官の請求に基き、裁判官において已むを得ない事情があると認めた場合に限り、これを発するものとし、その延長に係る期間は、通じて十日をこえてはならない。この許可状には已むを得ないと認められる事情を明記しなければならない。


(証拠物等の取り扱い)


第二条の三 警察官は前二条の規定によつて質問又は拘束をして検索し、凶器又は電磁的記録その他の犯罪を構成するべきものを発見したとき、これを押収することができる。

2 前項の規定に基づいて押収した物品が犯罪を構成するとき、検察官は、刑事訴訟に関する法律に基づき、押収された物品を裁判において証拠として用いることができる。


(保護)


第三条 警察官は、異常な挙動その他周囲の事情から合理的に判断して次の各号のいずれかに該当することが明らかであり、かつ、応急の救護を要すると信ずるに足りる相当な理由のある者を発見したときは、取りあえず警察署、派出所、病院、救護施設等の適当な場所において、これを保護しなければならない。

一 精神錯乱又は泥酔のため、自己又は他人の生命、身体又は財産に危害を及ぼし、公安を乱すおそれのある者。

二 迷い子、病人、負傷者等で適当な保護者を伴わず、応急の救護を要すると認められる者。

2 前項の措置をとつた場合においては、警察官は、できるだけすみやかに、その者の家族、知人その他の関係者にこれを通知し、その者の引取方について必要な手配をしなければならない。責任ある家族、知人等が見つからないときは、すみやかにその事件を適当な公衆保健若しくは公共福祉のための機関又はこの種の者の処置について法令により責任を負う他の公の機関に、その事件を引き継がなければならない。

3 第一項の規定による警察の保護は、七十二時間をこえてはならない。但し、引き続き保護することを承認する簡易裁判所(当該保護をした警察官の属する警察署所在地を管轄する簡易裁判所をいう。以下同じ。)の裁判官の許可状のある場合は、この限りでない。

4 前項但書の許可状は、警察官の請求に基き、裁判官において已むを得ない事情があると認めた場合に限り、これを発するものとし、その延長に係る期間は、通じて十日をこえてはならない。この許可状には已むを得ないと認められる事情を明記しなければならない。

5 警察官は、第一項の規定により警察で保護をした者の国民個人番号、氏名、住所、保護の理由、保護及び引渡の時日並びに引渡先を毎週簡易裁判所に通知しなければならない。

6 警察病院は、第一項の規定により警察で保護をした者に対して、必要と認められる医療、看護、修理その他の措置をとることができる。


(避難等の措置)


第四条 警察官は、人の生命若しくは身体に危険を及ぼし、又は財産に重大な損害を及ぼす虞のある天災、事変、工作物の損壊、交通事故、危険物の爆発、狂犬、奔馬の類等の出現、極端な雑踏等危険な事態がある場合においては、その場に居合わせた者、その事物の管理者その他関係者に必要な警告を発し、及び特に急を要する場合においては、危害を受ける虞のある者に対し、その場の危害を避けしめるために必要な限度でこれを引き留め、若しくは避難させ、又はその場に居合わせた者、その事物の管理者その他関係者に対し、危害防止のため通常必要と認められる措置をとることを命じ、又は自らその措置をとることができる。

2 前項の規定により警察官がとつた処置については、順序を経て公安委員会にこれを報告しなければならない。この場合において、公安委員会は他の公の機関に対し、その後の処置について必要と認める協力を求めるため適当な措置をとらなければならない。


(犯罪の予防及び阻止)


第五条 警察官は、犯罪がまさに行われようとするとき或いはその疑いを認めたときは、その予防のため関係者に必要な警告及び命令を発し、急を要する場合においては、その行為を阻止することができる。


(立入)


第六条 警察官は、犯罪その他の危険な事態が発生した場合において、その犯罪を鎮圧し、危害を予防し、損害の拡大を防ぎ、又は被害者を救助するため、已むを得ないと認めるときは、合理的に必要と判断される限度において他人の土地、建物又は船車の中に立ち入ることができる。

2 興行場、旅館、料理屋、駅その他多数の客の来集する場所の管理者又はこれに準ずる者は、警察官が犯罪の予防又は人の生命、身体若しくは財産に対する危害予防のため、その場所に立ち入ることを要求した場合においては、正当の理由なくして、これを拒むことができない。

3 警察官は、前二項の規定による立入に際しては、みだりに関係者の正当な業務を妨害してはならない。

4 警察官は、第一項又は第二項の規定による立入に際して、その場所の管理者又はこれに準ずる者から要求された場合には、その理由を告げ、且つ、その身分を示す証票を呈示しなければならない。


(武器の使用)


第七条 警察官は、犯人の逮捕若しくは逃走の防止或いは阻止、犯罪の鎮圧、自己若しくは他人に対する防護又は公務執行に対する抵抗の防止或いは抑止、公安及び治安の維持、公共に対する脅威の排除のため必要であると、警察官において合理的に判断した場合においては、武器を使用することができる。ただし、刑法第三十六条(正当防衛)若しくは同法第三十七条(緊急避難)に該当する場合又は左の各号の一に該当する場合を除いては、人に重大な危害を与えてはならない。

一 第二条又は第二条二項に規定する質問、検索、又は拘束若しくは第五条に規定する命令その他適法な職務の執行或いは犯罪の鎮圧に際して警察官から発せられた指示若しくは警告又は命令に犯人若しくはその疑いのある者が従わない場合若しくは抵抗する場合。ただし、この場合に於いては、実際に危害を与える前に、警察官が危害を与えようとする者及び居合わせた者に対して、口頭若しくは警笛、武器の指向又は威かく射撃その他適当な手段を用いて、危害を与えようとする旨を警告しなければならない。しかしながら、事態が急迫であつて警告するいとまのないとき又は警告することにより相手の違法行為等を誘発する虞があると警察官において認めるときは、この限りでない。

二 逮捕状又は現行犯若しくは緊急を以て逮捕する際又は勾引状若しくは勾留状を執行する際その本人がその者に対する警察官の職務の執行に対して抵抗し、若しくは逃亡しようとするとき又は第三者がその者を逃がそうとして警察官に抵抗するとき、これを防ぎ、又は逮捕する場合。

三 第三条に規定する保護に際して、警察官に抵抗し、自己又は他者の生命若しくは身体に危険を及ぼし、又は財産に重大な損害を及ぼす虞がある場合。

四 警察が保有する武器又は装備その他職務執行上重要な財産を防護し、若しくは国防上又は国益上重要な財産に対する急迫不正の侵害を排除する場合。

五 治安出動命令又は警備出動命令若しくは国外展開命令その他、我が国の存立又は国民の幸福追求権が根底から覆されるおそれがある事態に対処するために出動又は展開を命ぜられたとき、政令で定める警察活動方針又は部隊指揮官の命令による場合。

六 我が国の存立又は国民の幸福追求権が根底から覆されるおそれがある事態の予防のため、他に適当な方法が無いと警察庁長官が認める場合。ただし、この場合においては、予防のための措置を命じた日から二十日以内に国会に付議して、その承認を求めなければならない。ただし、国会が閉会中の場合又は衆議院が解散されている場合には、その後最初に召集される国会において、すみやかに、その承認を求めなければならない。

2 携帯制圧波照射器又は警棒若しくは徒手、催涙器具その他の専ら人に重大でない危害を与えること又は威かくを目的として設計され、或いは使用される武器又は実力について、第五条及び第一項本文の要件に基づいてそれを使用し、その結果として人に重大な危害を与えた場合、刑法第三十五条(正当業務行為)によるものとみなす。ただし、警察官に故意又は重大な過失があるときはこの限りではない。


(国外展開時の権限)


第七条の二 警察官は、内閣総理大臣又は国家公安委員長若しくは警察庁長官の命令により国外展開した場合、我が国又は国際連合及び同志国若しくは同盟国その他政令が定める主体が占領する地域の公安及び治安の維持、ゲリラ・テロ等の防止或いは阻止のため、必要な権限を行使することができる。


(他の法令による職権職務)


第八条 警察官は、この法律の規定によるものの外、刑事訴訟その他に関する法令及び警察の規則による職権職務を遂行すべきものとする。

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