6月 1日木曜日 会議室 妨害指令2
宮本丈治
教頭の日暮先生が校長室から出てくると「宮本先生、ちょっと」と職員室の隣の会議室へ呼ばれた。会議室に入ってドアを閉めるとすぐ立ち話になった。
「宮本先生、校長先生から対立候補はいないのですかと言われました」
「今のところおりませんね」
「そんな事は分かってます。要するに我々でそういう手を打つのは黙認すると言われたって事です」
「なるほど」
そうなると教諭の方で誰か探さなければならない。教頭はようやく自分に頼みたい事を口にした。
「誰か2年生で適任者はいませんか」
いやあ、日暮先生も酷い。そこを丸投げ?とは思ったものの顔色一つ変えずに返した。
「一人、心当たりがあります。多分誘導も難しくないでしょう」
そう言うとその生徒のプロフィールなどを日暮先生に説明した。
「そんな子がいたんですねえ。そんな子なら自分で立候補しそうなものですが」
あの子の性格じゃ心底気が合う奴しかついていかないだろうし、そんな友人が二人もいるとは思えない。
「真面目過ぎるんでしょうね。だから推薦者についても手当が必要ですが、これも多分一押しすればこちらについてくれると思うので問題ないでしょう」
もう一人推薦人に向いた1年生がいたが、中学校からの書類で生徒会活動の実績については表面化はしてないが相当な軋轢があり教諭らが苦労させられた旨添え書きがあったので名前は出さなかった。
さて、そうなると明日は忙しくなるな。
古城ミフユ
喫茶店は18時前には出て一緒に帰るという二人と別れた。今日は父と母が夕食を用意すると言われたのでまっすぐに家へ帰った。
「ただいま」
「おかえり」
とお父さんの声が返ってきた。そして廊下のドアを開けてキッチンに足を踏み入れて「!」。
「な、なんかすごく張り込んでない?」
「お姉ちゃんの出陣勝利を祈願してのビーフカツレツだって」とミアキの解説、ありがとう。鼻息が荒いよ。
「よーし。主賓も帰ってきたからビーフカツを揚げようか」というお父さん。
お母さんはというとサラダの飾り付けがちょうど出来た所でシンクからテーブルへと置こうとしている所だった。手を止めて私の方を見て私がまだ制服なのを見てとった。
「ミフユは今のうちに着替えてきたら?」
「うん!」
私は階段を駆け上がった。
食後はミアキが選び抜いて買ってきてくれたというケーキとお母さんのいれてくれたコーヒーとなった。そこで両親からある事を言われた。
「うーん。今の所、陽子ちゃんと日向くんだけだから」
「増えるでしょ。それに増えたら言ってくれればいいし」
「そうかな。……わかった。人数は増えたら言うね。で、時期だけど前の方がいいかなって思うからこの辺りの週末でいいかな?」
「……ん、その日でもいいよ。お父さんもミアキも大丈夫?」
「大丈夫!」というミアキ。頷くお父さんだった。
こんな両親や妹だから私は安心して頑張れる。明日からの選挙準備頑張るぞと心に誓ったのだった。
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