閑話. 部屋の仕切り

 アリータは朝から不機嫌だった。

それは昨夜、夜型のアリータが無理して生活リズムを調整しようとしたのにも関わらず、コバートのイビキがうるさかったせいで上手くいかなかったからである。


「おらぁ!チャラ助ぇ! 夜寝る時は息止めときなさいよ!アンタのイビキでみんな迷惑してんのよ!!!」


 アリータはコバートに自分の枕を投げつけた。

それはコバートの顔面によって止まり、虚しく膝上に落ちた。


「えー? 俺そんなイビキ出てる?」


 本人はまったくの自覚なし。

正直なところ怜央もうるさいと思っていた。


「そんな若くしてイビキなんて……お前も大変よな」

「うぇ!? マジでか! 全然気づかなかった」

「ほらぁ!みたことかぁ! 部屋変えるなりしてどうにかしなさいよ!」

「どうにかってそんな無茶な……」


 怜央は少し考えて、ある思いつきが閃いた。


「んー……それなら仕切りを作ってみるか? 少しはマシになるかもしれん」

「仕切り? 一体なにでどのように仕切ろうっていうのよ?」

「この何も無い部屋に仕切りは大変だぜ? しかも音を遮るってなると、薄いものじゃ微妙だし部屋も狭くなる」

「ふっふっふ、どっちの問題もクリアできるんだなーこれが」


 怜央はコバートのベットの前に経つと、何かの拳法をイメージした動きをし、能力を発動させた。


「必殺魔力壁! ハァッ!」


 すると、コバートのベットの周りを不透明な青い壁が包んだ。

それは床から天井まで隙間なく囲み、出入口用のドアまでついているという優れものだった。


「おお! すっげぇ!」

「それで? これでコバートの爆音イビキが変わるっていうの?」

「やってみりゃわかるさ。コバート中で叫んでみてくれ」


 怜央はコバートに合図して仕切りの中に入れさせた。

そして数秒が経つと再び出てきた。


「何してんのよ、早く大声だしてみなさいよ」


 アリータは実験を急かすがコバートはその一言で確信した。

怜央を一瞥するとニヤリと笑って成功を示す親指を立てた。

それを見て怜央も自信げに頷く。


「な? 上手くいったろ?」

「上手くって何がーーまさか、もう!? 全然聞こえなかったわ!」


 ここにきてアリータも気付いた。


「しかもこれは俺由来の能力100%使用だから簡単に消せる」


怜央が仕切りをノックすると霧のようになってスゥー……と消えた。

 

「……やるわね」

「お褒めの言葉を頂き誠に光栄で候」


 意味不明な言葉と謎の紳士風お辞儀をする怜央。


だがこの日より、毎晩4人のベッドに仕切りを作るのが恒例となるのだった。


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