第3話 教室
やぁみんな、待ちに待った俺様の紹介だぜ!……え、お前だれだって?まぁ今まで適当に紹介されてたからモブ程度にしか思われていなかっただろうけれど、認知はしているんじゃない?そう、涼の塾の友達、
「どこに向かって話してるの?」
「おおっと、ごめん。気にしないでくれ」
今話しかけてきたのは紅葉の塾の友達、
「それで、なんの話だったっけ」
「ほらー、やっぱり聞いてないじゃん」
「ごめんごめん」
「次はどうやってあの子たちを2人きりにさせるかでしょう?」
そう、俺たち2人は涼と紅葉の仲を取り戻そうとしているんだ!
「今日はまだオリエンテーション期間だから、グループワークがあると簡単なんだけど」
「そうだな〜。ただ、昨日みたいに先生に指名させるのもいいかもしれないぞ」
「あー確かに!」
こんなふうに仲良く話しているが、もちろんつい最近まではお互いのことを知らなかった。1月の入試直前模試の日までは。
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「涼ちゃん、今回の手応えはどうだ?」
入試前最後の模試。いつものように会場となってる高校から2人で帰る時だった。
「で、彼女とは?」
「な、なんでお前はいつもそれを聞いてくるんだよ!」
「心配してやってんだよ〜。どうせお前のことだから『入試の勉強があるから邪魔するのは申し訳ない!』とか言っときながら入試が終わったら『1年近く全然話せなかったのに、今更声をかけるなんておこがましい!』とかいうんだろ?」
「ぐっ……」
「図星か」
「お前には」
「桜ちゃんには」
『関係ないでしょ!』
涼が俺に叫ぶ声に同じようなセリフが重なった。本人は気づかずにいじけて先を歩いて行ってしまったが、俺は立ち止まって声のした方向を見た。そこには涼と同じようにスタスタと歩いていく女子と、俺と同じように立ち止まっている女子がいた。
「もしかして、あれが紅葉?」
「もしかして、あの子が涼くん?」
お互いが同じように友達の恋愛事情を心配していることもすぐにわかった。それから俺たちは、いろいろと相談するようになったんだ。
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「よーし、今日はこれで行こう!」
「うん、我ながらいい作戦だぜ!」
「明日は休日だけど、折角だから2人を出かけさせようか」
「お、いいね〜。俺たちが誘えば2人とも来るでしょ」
こうやって、友達の恋愛の進捗を見れるだけで俺たちは幸せになれる。そういう利害の一致で行動しているんだ。
「それに……。たまには、俺たちも出かけたいもんな」
「……うん。あの2人の面倒見てると、お出かけできないもんね」
あくまで遊びに誘うのも作戦のうち。『自分たちだけ付き合って、なんであいつら付き合わないんだ、ふざけるな!』と思っていたり、友達同士でWデートしてみたいとかそういう理由でやってるわけではないことは頭に刻んでおけ!
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「あれって紅葉の友達だよな」
「涼くんの友達もいるね」
「付き合ってるのかな」
「なんか仲良いよね」
「邪魔しちゃ悪いよな」
「なんか見守りたいもんね」
「……教室入れないな」
「……リュック背負ったまま学校探検しよっか」
なんやかんやで、涼と紅葉の距離も縮まった。
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