第13話 初めてのダンジョン 2
「モンスターになかなか会わないなあ…もしかして奥に誘われているんじゃないのかな…?」
ここまでモンスターが出てこないのはいくらなんでも不自然だよ…こんな広いダンジョンならモンスターの1匹ぐらいいてもいいと思うんだけどなあ…。
「考えすぎよ。もっと奥に行けばモンスターぐらい出てくるわよ。そんなにモンスターと戦いたいの?」
「モンスターと戦うのは嫌だよ。怪我とか怖いし。それに2人じゃ強いモンスターが出てきたらどうにもならないよ…。」
「でも地図載ってないにも出来立てのダンジョンよ?そんな強いモンスターが出るわけないわよ。第一そんな強いモンスターの出るダンジョンならとっくにモンスターと出会っているわよ。」
うーん…確かにサナの言う通りかな。出来立てのダンジョンってこんな感じなのかな?地図は1ヵ月前に発行された最新の地図だけど…それに乗っていないってことはこの1ヵ月で出来たダンジョンで間違いないはずだけど…それにしてもモンスターに1匹も出会わないのは変だよ…。
まさかとは思うけど…リントンとグランを襲っているから僕たちのほうが手薄になって居るとかじゃないよね?僕はモンスターが居ないに疑問を抱きつつもサナと一緒にダンジョンの奥へと進んだ。
「ここは…随分と広い道に出たね。」
「そうね。入り口と同じぐらいの幅があるかしら?多分この奥が次のフロアに続く道になって居るんじゃないかしら?」
「ねぇ?一回戻らない?どんなモンスターが出てくるか分からないからリントンとグランを呼んで4人で行こうよ。」
「大丈夫よ。モンスターが1匹も居ないダンジョンよ?きっと下に行ってもスライムぐらいしか出ないわよ?スライムなら私たち2人でも十分倒せるわ。」
「でも強いモンスターが出るかもしれないよ。やっぱり4人で行ったほうが…」
「あら?もしかして怖いの?」
「怖いよ。だって何が出てくるか分からないんだもん。」
「全くもう…しょうがないわね…じゃあ何かモンスターが居たら引き返すから。それならいいでしょ?」
「うーん…それならいいかな。でもモンスターが居たらすぐ引き返してよ。約束だからね。」
僕は奥に誘われているんじゃないかと不安を抱きつつもダンジョンの奥へと進んだ。
「ねえサナ…あれはヤバいんじゃない…?」
「そうね…あれは4人でも無理だわ…。」
僕たちの視線の先にはモンスターの群れが居た。数は…20匹は居るかな…あの数は僕たち2人だけじゃ絶対にやられる…多分4人で挑んでも勝てないと思う…今すぐに戻ろうよ…
「モンスターがあんなにたくさん居るんだし戻ろうよ。」
「そうね。20匹なんて私たち2人にはとても手に負えられないわ。」
「じゃあ早く戻ってリントン達にモンスターの群れが居る事を伝えないと…。」
それとすぐにギルドにも報告しないと…このダンジョンは街道からもそんなに離れていないし。もしもダンジョンが大きくなってモンスターが外に出てきたら街道を通る人に危害が及ぶかもしれない。そうなったら大変だ。
僕とサナは来た道を引き返そうとした。その時だった。来た道からモンスターの鳴き声と足跡が聞こえてきた。もしかして…これって…
僕の頭の中に悪い予感がよぎった。そしてその予感は的中した。僕たちが通ってきた道から10体近いモンスターが迫ってきていた。
「サナ…これってピンチなんじゃ…」
「ちょっとってレベルじゃないわよ…命の危機よ。」
「どっ…どうしよう…謝れば許してくれるかな…?」
「モンスターに言葉が通じるわけないでしょ!こんな時の対処法も講習で習ったでしょ。まずはそれを試すのよ。」
僕たちはお互いの背中を合わせ、なるべく死角が出来ないようにした。これならモンスターがどっちから来てもすぐに気づくことが出来る。僕とサナはなるべくモンスターを刺激しないよう、極力物音を立てないようにした。でもこれじゃ埒が明かない…それに逃げなきゃいつかは襲われる…。
「すぐに襲われるっていう最悪の事態は避けられたみたいね…。ニース。これを使うわよ。」
サナがボールのようなアイテムを手渡してきた。これは…確か衝撃玉だったかな?この球は投げて地面に落ちて数秒すると大きな音と衝撃波を出すアイテムだ。モンスターには大きなダメージを与えられないけど弱いモンスターなら一時的に行動を制限できる。買っておいてよかった…。
「いい?私が合図したら投げるのよ。投げてモンスターが怯んだら煙幕を張って逃げるわ。」
「わかったよ。」
僕はサナの合図に備えた。
「今よ!」
僕は衝撃玉をモンスターの目の前に投げ、すぐに耳を塞いてしゃがんだ。このアイテムの爆音は直に聞くと鼓膜が破れることもある。それに衝撃波は伏せないと転ぶこともあるほどの威力だ。
数秒後、ダンジョンの中に爆音鳴り響き、衝撃波が走った。僕達はしゃがんで耳を塞いでいたから無事だったけど目の前にいるモンスターは音と衝撃で混乱しているみたいだ。
「サナ!早く逃げよう!」
「ええ、こんなところもうこりごりよ!」
その時だった。怯んでいたはずのモンスターがもう動き始めた。
そんな…あれだけの衝撃と音でも数秒しか怯まないの…どうしよう…衝撃玉はもうないよ…
「ニース!ここは一か八かよ!」
サナが煙幕を投げた。通路内は瞬く間に煙に包まれモンスターの視界を奪った。
これが逃げる最後のチャンスだと思い僕たちは前に居たモンスターの群れに向かって走った。
「ハァハァ…何とか切り抜けることができたかな?サナは…どこだろう…」
サナはどこだ…確かにあのとき一緒に走ったはずだ。もしかして…そんな…でも出てこないってことは…それしかないよね…
「離して!いやぁ!痛い!まだ死にたくない!」
僕の頭の中に最悪の結末が過った時、煙の中からサナの悲鳴が聞こえた。でもその悲鳴はどんどん小さくなっていく…
そんな…サナが…だから僕はダンジョンに入るのは反対だったんだ!こんなところ入りさえしなければサナは死ななくて済んだんだ!
逃げないと…今度は僕がモンスターの餌になる番だ!
「風よ!我に加護を!シルフステップ!」
僕は覚えたばかりの魔法を唱えた。これで気休めだけど早く逃げれるはずだ。
そして僕は一目散にダンジョンの入り口を目指した。まずはギルドに報告しないと。サナの敵は必ずとって見せる!
「そんな…さっきはモンスター何て居なかったのに…」
あれから僕は死に物狂いで走って何とかダンジョンの入り口までたどり着いた。
でもダンジョンの入り口にはモンスターが何十匹も居た。僕1人じゃ絶対に勝てない…リントンもグランももしかしたらもうあのモンスターたちに…
僕の頭の中が絶望に支配された。あの時もっと強く言っていれば…
後悔してももう遅かった…モンスターの大群が迫ってくる。でも恐怖で足が動かない…ああ…僕はこのままモンスターの餌になるんだ…
体中に痛みが走り、僕の意識を奪っていった。
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