虫使いのダンジョン経営

第4話 ダンジョンマスターのお仕事。

「ではこれからダンジョンの運営について教える。ノート準備はいいな？」

「ああ、問題ない。」

俺はさっきショップで買った高級ノート（４ＤＰ）を開き、鉛筆と消しゴムセット（５ＤＰ）を手にした。この万年筆、手になじんでいい感じだ。

それにしてもショップに万年筆とノートが売っているとはな…これってファンタジーの世界だと割とオーパーツだよな。ノートもこんな立派な物じゃないし鉛筆なんてあるはずがない。

「じゃあまずダンジョンマスターの役目についてだ。お前はダンジョンマスターとは何だと思う？」

ダンジョンマスターとは何か…やっぱり一番最初に思いつくのはダンジョンのラスボスって事だな。後はモンスターを指揮する指揮官って所かな。他にはダンジョンを作ったりの雑務だな。

「簡単にまとめるとダンジョンのまとめ役ってところか？」

「随分と大雑把だな。たが間違ってはいない。」

「そしてマスターとして今やるべき仕事は戦力の拡充とダンジョンの拡張か？」

「その通りだ。ダンジョンの拡張については問題はないだろう。問題は戦力の拡充だな。」

その通りだ。今いる戦力はターマイト５匹。ランクは下から２番目のＦランクだ。レベルが上がれば少しはランクも上がるだろうけど、元がＦランクだから上がってもＥランクだろう。早く兵隊アリや女王アリを召喚しないとな。

「さすがに俺もこれで勝てるとは思っていない。猶予期間が終わるまでには他の役割のターマイトを召喚するつもりだ。」

「それには大量のＤＰが必要になるな。ソルジャーターマイトは５００ＤＰクイーンターマイトは１００００ＤＰが必要になる。今の状態ではとても呼べないな。」

「だからまずはダンジョンを広げて入手出来るＰｔを増やす。」

幸いな事に俺が召喚したターマイトのダンジョンを構築する力は優秀だ。１０日もあればかなりの面積を掘ることが出来るだろう。掘ったところはＤＰをつぎ込んで領地にする。最初は厳しいけど入手出来るＤＰは確実に増えるだろう。

「まあ、王道的なやり方だな。幸いこのペースならかなり早期に上位モンスターを召喚出来るようになるだろう。」

そういやここまで何時間かずっと穴を掘らせているがずっと掘らせても大丈夫なのか？

「アン、モンスターって疲れたりするのか？」

「基本的には生き物だからな。ずっと作業をさせれば疲労は溜まる。」

なるほど。じゃあ２チームとかに分けて交代で作業を命じた方が効率が上がるかもしれないな。数が増えてきたら検討しよう。あとは掘った場所の領地、つまりダンジョン化のやり方だな。

「アン。領地化のやり方を教えてくれ。」

「やり方は簡単だ。モンスターが掘った所を指定してアプリから領地にするを選べばいい。」

なるほど。そりゃ随分と簡単だな。まあ多用するコマンドだから簡単な方が助かるな。

いま掘っている穴の直径は２ｍぐらいだ。ターマイトがギリギリ２匹通れる幅だな。これじゃあちょっと狭いからもう少し広げてから領地化させるか。

「次はダンジョンポイントの増やし方だ。君はこれが一番気になるだろう。」

「ああ。ダンジョンを運営する上で絶対に必要だからな。」

「じゃあダンジョンポイントを増やす要因と減らす要因について説明しよう。まずは増やす要因からだ。」

「ダンジョンポイントの増やし方については主に４つだな。１つ目拡張したダンジョンから得られるポイント。２つ目は侵入者がダンジョン内に留まることで貰えるポイント。３つ目は侵入者を倒すことで得られる討伐ポイント。４つ目はイベントの報酬で貰えるポイントだ。」

「貰える割合としてはどれが一番大きいんだ？」

「そうだな。初期のダンジョンならダンジョンから得られるポイントだな。上位のダンジョンになればなるほど他の３つの割合が大きくなる。だが大きなダンジョンでもダンジョンから得られるポイントが全体の６割弱を占めている。」

やっぱりダンジョンから貰えるポイントがメインか。侵入者から貰えるポイントは…初期のダンジョンだと来る相手も弱いだろうから微々たるものだろう。イベントで貰えるポイントは…これはダンジョンの戦力が充実するまでは参加賞以外は貰えないだろう。

「じゃあやっぱりダンジョンから得られるポイントが一番大きいんだな。」

「ああ、その通りだ。ダンジョン構築能力の高いモンスターを召喚したのは目の付け所がいい。」

「そりゃありがとう。反対にダンジョンポイントを減らす要因ってのは何なんだ？」

「ああ、一番大きいのはモンスターの召喚費と維持費だ。他はショップでも買い物やダンジョン領域の拡張や部屋のテーマ変更だ。」

やっぱりモンスターの召喚と維持費が一番高くつくんだな。後はダンジョン領域の拡張かに部屋のテーマ変更か…聞きなれない言葉だな。

「領地化とダンジョン領域の拡張は何か違うんだ？あとテーマ変更ってのはなんだ？」

「ああ、ダンジョン領域の拡張というのはダンジョンに出来る空間を増やすことだ。ＤＰを消費してダンジョンを作れる領域を拡張する事が出来る。領地化できるのはダンジョン領域の中だけだからな。あと部屋のテーマ変更というのはダンジョンの空間を別の環境に変更することだ。」

なるほど。じゃあダンジョンを大きくするには領域をＤＰで買ってその中にダンジョンを作っていくような感じか。それとテーマ設定か…上手く使えばこの洞窟が生息に適さないモンスターも住ませることができるかもしれないな。

「次はモンスターの集め方だ。これも何個か方法はあるな。主な方法は召喚と繁殖に進化、あとはイベントの褒賞だな。それとモンスターを直接スカウトする方法もあるな。」

主に４通りの入手方法があるって訳か。召喚は…いずれは出来るようになるだろうけど今は弱いモンスター以外は数を揃えることが出来ないな。それにまだ解禁されていないだけかもしれないけど呼べるモンスターの数も少ない。繁殖はこれから俺がやろうとしている方法だ。進化も行うことになるだろう。イベントの褒賞はまだ当分先だな。

最後は直接スカウトか…つまりモンスターと会話するってことだよな。これはアンじゃないとできないだろう。

「召喚で呼べるモンスターは最高で何ランクだ？」

「Ｂランクが最高だな。ちなみにイベントでもらえるモンスターの最高ランクはＳだ。」

「じゃあつまり強いモンスターを集めるにはイベントで勝ち抜く必要があると。」

「基礎能力の高いモンスターを集めるならそうなるな。だが経験を積んだでレベルが上がったモンスターは条件次第では状のモンスターと対等に渡り合うこともあるな」

つまりモンスターの戦闘の経験値はレベルという形で反映されるって事か。じゃあ可能であれば積極的にモンスターに戦闘をさせたほうがいいってことか。もちろん相手の能力を判断した上でだが。

「あと、スカウトっていうのはどうやってやるんだ？」

「説得によって配下にする方法が主だな。時には戦う必要もある。基本的にスカウトできるモンスターはスキルやアイテムで交渉ができる相手に限るな。無理矢理配下に出来るアイテムもあるが代償に能力が落ちる。極力は使わない方がいいだろう。」

俺も無理矢理配下にするっていう方法は使いたくないな。無理矢理仲間にされても士気は高くはならないだろう。極力は双方合意の上で仲間にしたい。

俺はモンスターと話すスキルを持っていないから交渉はアンに頼ることになるな。幸いアンの持っているスキルのレベルは高い。大抵のモンスターと話が出来るはずだ。

「じゃあ最後はイベントについてだな。イベントは月に１回ほどやっているな。内容はダンジョン対抗戦や攻城戦、防衛戦にボスバトルなどだ。」

「なるほど。ソーシャルゲームのイベントみたいなものか。」

「そーしゃるげーむ？なんだそれは？」

「ああ、俺が元居た世界の話で流行っていた遊びだ。」

この世界にソーシャルゲームなんてないよな。イベントの内容はなんとなくイメージはつくな。ダンジョン対抗戦はダンジョン同士の戦い。攻城戦はＮＰＣのダンジョンを攻めるイベント。防衛戦はその逆、ボスバトルは高ランクのボスと戦うイベントだろう。

「ちなみに報酬はどんな感じなんだ？」

「参加賞はダンジョンＰｔにアイテム。上位になればなるほど大量のＰｔとよりレアなアイテムにモンスターが貰える。」

「参加賞は何なんだ？」

「１０００から３０００ＤＰのダンジョンポイント。それと低ランクのアイテムだな。」

最高で３０００ＤＰか…序盤なら結構美味しいな。それにアイテムまで貰えるのか。ちなみに倒されたモンスターはどうなるんだ？

「アン、もしもイベントに出したモンスターが倒されるとどうなるんだ？」

「ああ、控えモンスターに入って一定期間は使えなくなる。あとイベントに参加しているモンスターはそのイベントが終わるまでダンジョンに戻せないから注意するように。」

イベントが終わるまでダンジョンに戻せないのは痛いな。もしも主力をイベントに出している事が侵入者側にバレればそこを狙われるだろう。アンの言うとおり注意しないとな。

「ダンジョンの運営の基本は以上だ。他にも細かいことはあるがそれは必要になったら教える。これ以上教えたら君の頭がパンクしかねないからな。」

「ああ、今これ以上教えられても理解できる気がしない。一旦情報を整理させてくれ。」

ダンジョンの運営ってのはシンプルに見えてかなり複雑なんだな。ノートも結構色々書いた。とりあえず後で清書しておこう。走り書きだから読むのにも一苦労だ。

あと今、穴を掘っているターマイト達もあと何時間したら休ませないとな。序盤で過労死なんてされたら痛い損失だ。

当面はダンジョンの拡張が優先だな。一定のＤＰが入るようになったら女王を召喚する為にＤＰを貯め始めよう。