第1話

都内の一流高校に入学して、初めての文化祭を終えた。

それはもう楽しい文化祭だった。汗や涙を垂らした時間が、今となっては宝物だ。

怒涛の準備、本番を終え、努力を懐かしみながら、私たちは片付けに入った。


「ゴミがまとまったら、どんどん捨ててきてくれー!後夜祭まであと30分だっ急いでくれ!」

陽が傾く夕方。芸祭という魔法が解ける。飾りつけも、看板もビラも、今となってはゴミ箱行きの用なしだ。せっかくつくったのに、惜しいなぁ。ポスターだけでも貰えないだろうか、なんてことを考えながら廊下に出ると、ゴミが大分溜まっていた。両手いっぱいに持っている紙の鎖を袋につめて立ち上がると、信明に声をかけられた。

「咲、一緒にゴミ捨てに行こう!」

「うん。行こう。」

私は教室に残っている結に、いってくる、と声をかけた。綺麗なおかっぱを揺らしながら、眼鏡をかけた顔の横で手を振ってくれた。私は大きな段ボールの束をかかえた信明と並んで歩き始めた。

「芸祭、あっという間に終わったな。」

「うん。芸祭の魔法、解けちゃったね。みんなの〈芸術祭〉に対するイメージが作り出した魔法。」

「おお……!すごくいいこと言うな。」

「信明と違って文系組だからね。これくらい普通だよ。あー来年はクラス離れちゃうね。理数系は1号館の教室だから。」

自分から言いだしたことなのに、なんだか寂しくなって顔を上げると、真っ赤な夕日が空を支配していた。この空も、少し経てば暗闇へと姿を変えるだろう。私達も、あと半年で……。

「寂しいこと言うなよ。渡り廊下さえ渡れば会いに行けるんだから。移動教室でもすれ違うことだってあるだろう。来年もずっと絡もうぜ!」

……ああ。やっぱり信明は変わっていない。そのセリフも、その笑顔も、何もかも。

安心したからか、何故なのか。私の目は涙ぐんでいた。今、隣に頼れる人がいるということが、どれだけ幸せなことか、改めて気付かされた。

「あ、咲も後夜祭出るよな?」

「もちろん!」

「そのあと、クラスの打ち上げあるけど、俺予約していないんだ。確かあかりもだよな。だから、俺と坂茶駅のカカオ寄っていかないか?」

「うん、行きたいっ!」

思い返してみると、芸祭の役割分担を決めた日以来だった。喫茶店のカカオはゆっくり話すのにぴったりだ。

今日の話をしたい。これからの話をしたい。ずっと話していたい。立ち止まった私の先を、信明は真っ直ぐに歩いている。私は2つ結びの髪を揺らして、頷いた。

彼に追いつきたい。私は一歩踏み出し、声をかけ

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