第102話
「さくらに、会えます」
思わず口に出た。
「ええ、さくらも会いたがってる。会ってあげて」
「お兄ちゃん・・・お願い・・・」
みずほさんと、さおりに、部屋まで案内される。
個室か・・・
気兼ねしなくていい・・・
真面目にだ。
「さくら、泰道くん来てくれたよ」
さくらは、眼に包帯をしている。
「泰道くん、驚いたでしょ?」
「うん・・・いつから・・・」
「かなり前から・・・」
「前?」
さくらは、頷く。
笑顔だが、内心は辛いだろう。
顔に出ている。
「普段から、時々私が、いなくなることあったでしょ?」
「うん。プライベートとか言ってたね」
「あれね。本当は病院に来てたんだ。眼の検査にね」
「眼の?」
さくらは頷く。
「でね。前なら手術すれば、視力を取り戻せる確率は高かったんだけど、少なくなったみたい」
「なら、どうして・・・」
「君と・・・ううん、あなたといたかったから」
「僕と・・・」
さくらは、いきなり泣き出した。
「お願い。泰道くん、どこへも行かないで。私のそばにいて・・・
もう、寂しいのはいや・・・」
「でも、さくらには家族が・・・」
「違うの・・・実は、私だけ血のつながりがないの・・・」
「えっ」
詳しくは訊かない方がいいだろう。
「みんな。優しくしてくれる。でも、気を使っているというのがわかる。
だから、泰道くん、あなたには、私を・・・」
僕は、優しく抱き寄せた。
柄ではないが・・・
「さくら、手術は・・・するの?」
「・・・うん・・・来週・・・」
僕は、そっと離した。
「わかったよ。さくらひとつ訊いていいか」
「何?」
「好きな色は?」
「青・・・水色が一番好き・・・見てみたい・・・」
それを聞くと、僕は部屋を出た。
「わかった。素敵な青い物をみせてあげる」
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