第二章 第五十八話 カーテンから漏れる日差し

「ウキィ?」


 ベイカーが目を覚ます。


 神代が蔓を解くと、ベイカーはすぐさまレベッカの肩に登った。


「おかえりなさい、ベイカー」


 レベッカは優しく彼に言うと「ウキッ!」と返事する。


 そして、レベッカは俺たち四人を見てこう言い始めた。


「みんな本当にありがとう。あなた達のお陰で、家族はまた元に戻ることができたわ。助けてくれてありがとう。あたし達はいつでもあなた達を歓迎するから。もし、何か助けがいる時はあたし達を頼って、できる範囲であなた達をフォローするわ。バートリー家代表として改めて本当にありがとう」


 そう言い彼女は右手を左胸に手を当てた。


 やっと終わったんだ。


 そう思い「ふぅ」と安堵する気持ちで息を漏らす。


 亮夜が俺の肩をポンと叩き「これで解決だな」と言う。


「あぁ、そうだな」


 そう答え笑う。


「すごいよ! みんな無事だよ! ふぅぅぅぅぅぅ!」


「岩城くん、うるさい」


「はい、ごめんなさい」


 そう言い、神代に謝る岩城。


 その状況を見てみんな一斉に笑った。


 笑いが収まり始めた頃、ブギーマンが俺たちにこう言い始めた。


「うーん! 素晴らしいですぅ! はこれで終わりとなります。皆さんお疲れ様でした」


 それを聞いて「あぁ、よかった」と答えた。


「えぇ、よく頑張りました。……では皆さん、起きる時間ですよ」


 ブギーマンはそう言いパチンと指を鳴らすと、俺たちの目の前に姿見鏡が現れた。


 もう起きるのか。


 そう思っていると「みんな!」とアンが俺たちを呼んだ。


 俺は振り返りアンを見ると、彼女がこっちに向かってくる。


 そして、俺たちの前に止まる。


「零……宏……亮夜……岩城……」


「うん、真吾って言ってくれないんだ」と岩城が呟くと、それを聞いた神代が岩城の脇腹あたりを肘でついた。


 岩城は「ヴッ」と間抜けな声をもらす。


 アンは首を傾げる。


 そして、理解したのかこう言い続けた。


「真吾! 本当にありがとう!! みんな、私のヒーローだよ! またね!」


 そう笑顔で言うのだった。


 これが人を助けるということか。


 達成感と嬉しい気持ちが同時に俺の心を温める。


 神代、亮夜、岩城を見ると、彼らも笑っていた。


 そして、自然と笑みを浮かべる


「うん」


「あぁ」


「ふふっ」


「嬉しいよ、ありがとうアンちゃん。……それじゃみんな起きようか」


 そう岩城が俺たちを見る。


 各々それぞれが頷き、姿見鏡を見始めた。


 鏡に映るのは俺だけ。


 視線は自然と自分の顔を見つめていた。


 鏡の俺と今いる俺の目と目が合う。


 あっ、俺だ。


 そう思いながら瞬きをすると、見慣れた天井を見ていた。


 目覚まし時計が朝を告げている。


 やっと戻れたんだ、あの世界から。


 カーテンから漏れる日差しが心地よく感じる。


 俺は窓から差す光をボーッと眺めこう思うのだ。


 今日が来たんだな、と。


「ふぅ、身支度するか」


 そう呟き俺は起きるのだった。

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