第224話花は咲く

 復興支援テーマソングの「花は咲く」を最近繰り返し聴いている。東日本大震災から10年になる。早いものだ。あの時はちょうど仕事中で事務所の中はパニックになった。それからというもの、原発の放射線量がどうのこうのという混乱期が続き、うつっぽくなったものだ。あれから何が変わったのか。

 原発の汚水を海に捨てるしかないという状態になり、たぶん今後汚染水を海に捨てることになるだろう。そして原子炉を冷却する作業は長期にわたって続く。東北の太平洋側の沿岸部は復興という名のもと、高台などを設置してある程度は整備されたが、住民は戻ってこないと聞く。

 復興がうまくいったのかというのは、難しい問題だが、表面上だけ見ても報道されないだけで、原発他問題は山積みだ。皆、忘れるのは早い。かくいう私も忘れていく。そんな中、「花は咲く」を聞くとあの頃のことを思い出す。

 菅野よう子作曲のこの曲は名曲だ。日本人の心に震災の記憶とともに残っていくことだろう。

 最近、大震災とコロナ禍が体験としてリンクしてくる。何かしたいが、何もできないという無力感を感じるという点で両者状況が似ている。だから、この時期になって「花は咲く」を聴きたくなったのだろう。

 この曲の歌詞にある「私は何を残せただろう」という部分が身に染みる。私はコロナ禍にあっていったい何を残せるのであろうか。自問する日々は続く。

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