chapter 2 -road to quest- 02

「おぉ、あんちゃん達か。クエストだな?」

さっきの番兵が話しかけながら、クエストペーパーを確認する。

悠がクエストペーパーを手渡した。

「あんちゃん達、パーティは組んでるのか?一緒にクエストに行くなら、忘れずに組んでおけよ。」

クエストペーパーを戻す。

「ここを出たら、始まりの森とは逆の方に進んでいけ。コボルトやグリーンスライムの生息地になっている。最近数が多いからなぁ。」

クエストのヒントも得られるんだったな。

「ありがとう。」

親切な番兵だな。

NPCではなく、この人はキャストなんだろうな。

俺たちは関所を後にした。


クエストは討伐、ドロップアイテムの収集、偵察の三つ。

そのうち二つはモンスターとの戦闘が絡んだクエストである。

こっちから先に終わらせてしまおう。

コボルトからドロップするコボルトの毛や牙を規定数、グリーンスライムからドロップする緑の雫を規定数入手することが、このクエストのクリア条件である。

番兵の話だと、はじまりの森からの道と反対の方へ行けば、クエストで指定されたモンスターが生息するエリアだ。

「狩場では、他のプレイヤーとかち合ったりしないのかな。」

「大丈夫だろ。モンスターのスポーンエリアは、結構広いみたいだし。」

他の冒険者連中と共闘することになるのもいいが、内輪のパーティ狩りで、横殴りやモンスター釣りでの縄張り争いはしたくない。

ゲームの中でもトラブルは起こるものだ。

「着いたらわかる。そんな狭いエリアじゃないさ。」


着いたらわかった。

「広大すぎるんだが……。」

メジハの町から、道を歩いて5分ほどの距離だった。

木々生い茂る森から、草原地帯へとやってきた。

爽やかな風が吹き抜ける。

見渡す限り、一面が草原だ。

所々、木々が生えているところもあるが、狩場スペースは悠々と確保出来そうだ。

「確保する狩場がデカすぎるだろ。」

「多人数プレイを想定してのことなんじゃないか?ヒントによると、モンスターは点在する木陰にスポーンするらしい。」

これだけ広大な草原ねら、スポーンすれば見逃すことはないな。


と思ったそばから、モンスターを発見した。

体を引き延ばして照準をつけるこの姿には、見覚えがあった。

グリーンスライムだ。

「来るぞ。構えろ。」

俺も悠の声で剣を振り上げる。

「スライムが飛んできたら、振り下ろして撃ち落としてやる!」

スライムは柔らかな自分の身体を限界まで伸ばして、こちらを狙っている。

グググッ……、バシュッ!

スライムの速度はチュートリアルで知っている。

タイミングを合わせて、剣を振り下ろす!

「うおりゃー……ありゃ?」

剣は空を切る。

どうやら外したらしい。

しかしスライムの攻撃の衝撃もない。

「どうやら互いに外したらしいな。」

俺はスライムを探して見回す。

見当たらない。

「何やってる。下だ!」

悠が言った。

下を見る。

そこには、再び身体を伸ばしたグリーンスライムがこちらに照準を向けているのがわかった。

バシュッ!ドン!

顎下に衝撃を感じる。

痛みを感じるほどのものではないが、顔に当たって驚き、剣を投げ出して後ろに倒れこむ。

「いっ…、ててて。何が起きたんだ。」

身体を起こすと、悠が寄ってくる。

「やはりチュートリアルのスライムとは動きが違うな。レベルが上がった感じがする。」

「素早くなってるってことか。またタイミング合わせだな。」

腰と顎をさすり、立ち上がって剣を拾う。

「それだけじゃない。昇が剣を振りかぶったのを見てか、スライムの照準が急に下を向いたんだ。」

身体を伸ばし、こちらを狙っていたスライムは、こっちが剣を振り上げたのを見て照準を変え、距離を詰めて次の攻撃に繋いできた。

モンスター自体のレベルがどうこうではなく、要求されるプレイングレベルまで上がっている。

ダメージ量は、近くからの攻撃だからなのか、グリーンスライムがスライムよりも上位のモンスターだからなのかはわからないが、ただのスライムの2倍ほどはあった。

「難易度いきなり上がったな…。」

「スライム系の動きがここまで違ってくるとはね…。コボルトとかどうなるんだ。」

「確かにな…。このゲームはカラダ動かしてる感覚だから、中々難しいんだよな。」

でも楽しい。

難易度が上がったことで、攻略するという目標が生まれ、出来る事が増える。

どうすればいいかを考えながら進めていけるのは、やりがいを感じる。


悠もファイアの魔法で火球を打ち、応戦するがなかなか当たらない。

それほど動きが俊敏という事か。

「もういっちょ来るぞ。」

振り返るとグリーンスライムはまた照準をこちらに向けて狙っていた。

「今度はそうはいかない。」

こちらに向けて二段階発射する。

バシュ!

一段階跳ねたスライムがこちらに向かって跳躍する前に、アイテムボックスから左手で盾を取り出す。

同時にしゃがみこんだ俺は、地面に軽く刺す。

ガンッ!

盾にスライムが衝突する。

衝撃でスライムが動きを緩める。

「よし!今だ!」

スキル発動。

―薙ぎ払い。

思い切り剣を横薙ぎに振る。

前方180°に剣撃を与えるこのスキルは初期から覚えられるスキルの中で、最初に選んだスキルだった。

「どうだ!?」

俺のスキル攻撃はグリーンスライムにヒットしたようだった。

しかしグリーンスライムは軽く転がり、もぞもぞと動いているようだった。

「任せろ。」

そう言うと悠がファイアでダメージを与える。

鈍くなったグリーンスライムは、火球の一撃で消えていった。


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

名前  :ノビー(昇)

Lv   :3

職業  :戦士

装備  :鉄の帽子

     ガントレット

     鉄の鎧

     鉄の剣

     鉄の盾

スキル :薙ぎ払い

アイテム:???の指輪(未鑑定)

     スタートポーション×30

     短刀

     ブーメラン

所持金 :120G

――――――――――――――――――――――――――――

名前  :ゆうゆう(悠)

Lv   :6

職業  :魔法使い

装備  :とんがり帽(魔女)

     布のローブ

     木の杖

     火の書01

     氷の書01

     癒しの書01

スキル :ファイア

     チリング

     ヒール

アイテム:スタートポーション×27

     マジックポーション×7

所持金 :110G

――――――――――――――――――――――――――――

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る