chapter 1 -beginning of the game- 03

「悠のファイアのタイミングに合わせて前に出る、ってのは良いな。」

俺たちは町の方向に見える尖塔を目指し、歩いていた。

戦闘のチュートリアルを難なくこなし、Lvも少し上げ、ドロップ素材も少し集めた。

「戦闘系のクエストとか楽しみだな。これだけハマれば、ちょっと難易度上がっても大丈夫そうだね。」

「だなぁ……、ってお前マジでどうなってるんだよ。」

「え?何?」

「お前、後衛でも結構動き回ってたよな。杖振りまわしてさ。そのはずなのに何で汗だくなのは俺だけなんだよ。」


俺は戦士で近接職業だから、しょうがないけどさ。

まぁ、後衛である悠のメインスキルはファイアだし、炎飛び交うバトルフィールドに飛び込むわけだから、熱いのは当然なんだけど…。

それにしたって、周りの気温も急上昇したら疲れもするんじゃないのか?

それに悠が着てる服。

「悠のつけてるローブって、膝下くらいまで隠れる服なんだから、コート着てるようなもんだろ。」

「いやぁ、どうだろうな…。お前こそ、汗かきすぎだろ。ちょっと肌寒いぞ、ココ。」

んなわけあるか!

肌寒さなんか感じないくらいのいい天気だ。

そのせいで、発汗量に拍車をかけている。

「…俺が暑がりなのか、肌寒さは感じないな。涼しくもないし…。」

個人差ありすぎるだろ!

「…俺が前衛、昇が後衛の方が体温的にはバランスよかったかもな。」

「それな。ってか、このゲームそんなとこまでリアルなのか…。俺、結構思いっきり剣振り回しちゃったけど、筋肉痛とか大丈夫かな…?」

慣れない動きを思いっきりすると、てきめんに筋肉が悲鳴を上げるような気がした。

「いや、それはさすがに…。実際に剣振ってるわけでもないしな。」

そりゃそうか、筐体に乗り込むタイプのゲームのはずだからな…。


砂利道を歩いていると、林道を抜け、丘の上に出た。

今まで小さく見えていた尖塔が間近に見え始め、町の様子が見え始めた。

中世風の平屋民家が立ち並ぶ、集落の集まりのようだ。

だが中心には今まで見えていた高い尖塔や、立派な建物も見える。

耕作風景が広がり、その周りを木で簡易的に作られた柵が囲んでいる。

耕す人、商う人、買う人、見張る人。

その他、それぞれが町の中で生活を営む様子を見ることができる。

「おぉー、すげぇ。」

「あれが第一の町、メジハだ。どうよ、ちょっとしたもんだろ。」

確かになんとも言えない気分になる。

憧れのRPGの世界に居る。

冒険譚の登場人物たちをただただ眺めているだけではない。

その一員となっていく、という実感。

子供の頃訪れたテーマパーク以上の感動だ。

「これだよ、この没入感!さすが究極のVRゲーム、RPGに入り込むってのはこうじゃないとな。」

いやが応にもテンションが上がる。


「この丘を下れば、町の関所がある。もうすぐだな。」

関所!

第一村人は門番か。

町に入れば、このゲームで出来る事が増えるはずだ。

冒険者として、ギルドに所属し、クエストや依頼をこなしたり、素材やアイテムを整理して新しい装備を入手したりとRPGとしての行動の幅が広がる。

思ったよりも足取りは軽かった。

思わず走り出してしまいたくなるが、すぐに装備の重さを思い出し、歩みを遅くした。


待った。

その前に悠に確認しておくことがある。

「そういえば、お前はどういう立ち位置でやってくんだ?」

「なんだよ立ち位置って。」

「いや、女キャラだから、ロールプレイもどうするのかと思って。」

ロールプレイがオンラインの鉄則、というわけではない。

ないが、せっかくこれほどのゲームなのだから、しっかりなりきってプレイしたいと思うのが人情ではないか。

だが、悠は女キャラ。

あらかじめ方針を教えてもらったほうが良いだろう。

「うーん、口調そのままでいこうと思ってたからな…。男勝りな感じでいいじゃん。リアル情報を明かしたりすることはほぼないだろうし、あえて説明することも無いだろ。」

「そっか、それなら気楽に他のプレイヤーたちともパーティ組めるな。」

「このキャラでネカマ行為は犯罪的だろ。でもキャラで呼び合う必要はありそうだな。」

「了解。ま、なるようになるか。悠はもう町まで行ったことあるんだろ?」

「まぁな。メジハに入ったら、とりあえずギルドでクエストを受注しようぜ。」

「そうだな…。なぁ、メジハにはアイテムの…鑑定ができる奴は居るのか?」


俺は初期地点で拾ったあの指輪が気になっていた。

アイテムボックスから???の指輪(未鑑定)を取り出す。

「この指輪が気になってさ、(未鑑定)という表示があるということは、鑑定を行うことでアイテム、もしくは装備として活用できるってことじゃないか。」

俺はこの指輪に魅せられていた。

レアアイテム。

高Lvのモンスターとの戦闘にも有用な効果、能力を向上させるようなバフがついていてもおかしくない。

昔見た映画の主人公を思い出す。

私もその映画のように、指輪のことが気になって仕方がない。

「ゴ〇ムかよ。なんだよ、そのアイテムがチートクラスのアイテムなら無双出来そうだもんな。」

指輪を見つめる俺の姿を見て悠があきれる。

「異世界で強くてニューゲームはやっぱり夢だからな。そういうのもアリだろ。」

俺は指輪を隠すようにアイテムボックスにしまい込んだ。

「ハイハイ。鑑定士はギルドに居るらしいが、アイテムのランクによって鑑定の可否が変わるらしいぞ。」

え、なんだそれ。

じゃあもしかしたら、このアイテムは相応の時が来るまでお預けってことか。

「マジかよ…。それ確実にゲームバランス崩壊レベルのアイテムは無いって事じゃん。」

少しがっかりだ。

「地道にコツコツ行こうぜ。こんな神ゲーなんだからよ。」

確かに…。

これだけのゲームだ、純粋に楽しむのが良いかもしれない。

でも…

「そうだな。だが、ギルドで鑑定くらいはしてもらうさ。」

俺Tuee転生的RPG生活を、俺はまだ諦めきれていないのだった。


そんな話をしていると、メジハの関所が見え始めた。


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名前  :ノビー(昇)

Lv   :3

職業  :戦士

装備  :鉄の帽子

     ガントレット

     鉄の鎧

     鉄の剣

スキル :薙ぎ払い

アイテム:???の指輪(未鑑定)

     スタートポーション×30

     青い雫×6

     レッサーコボルトの毛×4

――――――――――――――――――――――――――――

名前  :ゆうゆう(悠)

Lv   :6

職業  :魔法使い

装備  :とんがり帽(魔女)

     布のローブ

     木の杖

     火の書01

     癒しの書01

スキル :ファイア

     ヒール

アイテム:スタートポーション×27

     青い雫×5

     壊れた弓

――――――――――――――――――――――――――――

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