第2話 エレベーターに乗ったら、夢の国へ

「ああ~、遅刻だ。また希に怒られる。」

 望は、新・渋谷スクランブルスクエアにある高校に行くために、高層階行の高速エレベーターに乗った。

「はあ~、どこかに夢の国はないものか。」

 望が呟いた時に、サイコキネシスのような目に見えない力が発動する。

「あれ? こんなボタンがあったっけ?」

 回数ボタンを押そうとしたら、「夢」と書いてあるボタンがあるので押してみた。

「押してみよう。」

 エレベーターが動き出し移動を始める。高層ビルのエレベーターから見る景色は粗大であった。そして減速して、エレベーターが止まり扉が開いた。

「なんじゃこりゃ!?」

 目の前に、夢の国が広がっていた。


「ここはどこだ!? まるでエデンじゃないか!?」

 望の目の前には、異世界ファンタジーの世界のような、きれいな花が咲き、水が透き通って流れている、中世ヨーロッパ風の街並みが広がっていた。地上の楽園のエデンのように、人々が穏やかに暮らしている。

「ここは天界だ。」

 その時、声が聞こえる。白い服を着て、背中に羽を生やし、頭の上に輪っかを身に着けていた。

「おまえは何者だ!?」

「私の名前は、渋谷天使。神様の使途だ。」

「て、天使!?」

 現れた白い服を着ている者は、自分のことを天使だと言った。

「人間は愚かにも技術の向上をいいことに高いビルを建設し、どんどん神様のいらっしゃる空に近づいてきた。人間が天界にたどり着いても不思議はありません。」

「何を言っているのか、まったく分からん!?」

「望んだのは、おまえだ。」

「なに!?」

「神の国に行きたいと願っただろう。」

「そ、そういえば。」

 望に、は思い当たる節があった。

「望!」

 その時、望を呼ぶ声がするので、声のする方向へ振り返ってみた。

「お父さん!? お母さん!?」

 すると、死んだはずの望の両親が立っていた。

「おお! 我が息子よ!」

「望! 会いたかったわよ!」

「お父さん! お母さん!」

 望たちは互いに抱きしめあい、感動の親子の対面を果たすのであった。

「あれ? お父さんとお母さんがいるということは、俺は死んだのか?」

 ふと望は思いついた。

「おまえは死んではいない。だが、おまえの両親は生前に良い行いをしたので、天界で死後の平穏な生活を送っているのだ。」

 渋谷天使が、望の疑問に答える。

「その子はなんだ?」

 望の両親の後ろで、モジモジしている女の子がいる。  

「望、おまえの妹だ。」

「何!?」

 一人っ子の望の前に、突如、妹が現れるのであった。

 つづく。

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