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 宴も中盤に差し掛かった頃から、第2夫人の視線が妙に気になっていた……。こちらをチラチラと見ながら、不服そうな表情を浮かべている。


 なんだろう?


 不意に立ち上がり、第2夫人がこちらに向かって歩いてくる。

 やはり、私だ。私を、まっすぐに見据えている。


「巫女には似合わぬかんざしをしておるな。私が失くしたものと実によく似ている」


 私のかんざしを取ろうと、手を伸ばしてきた。


 怖い! けれど、渡せない。これは、ジュンユン様からもらったものだ。私の大切なかんざしだ!


 とっさに、かんざしを手で抑えていた。


「これは、スヨンのものです!」


 透かさず、コウがサッと立ち上がった。


 コウだって、怖いはずなのに……。もう、涙が出そうだ。


「無礼者! 巫女の分際で、私に意見するのか!」


 私のせいで、コウが怒鳴られている。どうしよう。 私は、どうしたらいいの?


「申し訳ございません。無礼をお許しください! ですが、この者は、礼拝堂を出る時からこのかんざしを着けておりました」


 マヤ様が私達を庇うように、第2夫人の前に出た。

 立場が悪くなることも顧みずに、堂々と釈明してくれている。


 私なんかの為に……。

 申し訳なくて、涙が零れた。


「もう良い! そのかんざし、ちょうど飽きていたところだ。卑しい身分の者と張り合うつもりはない」


 私のものなのに……。

 悔しかった! 疑われていることも、コウを怒鳴り付けられたことも、マヤ様を侮辱されたことも。

 何もできない自分が、本当に情けない……。


 突然、美咲さんがこちらに向かって歩いてきた。

 第2夫人とマヤ様の間に入り込み、


「そのかんざしは、イケメン天使が世奈にあげたものだから!」


 強い口調で、そう言った。

 美咲さんが言うイケメン天使とは、ジュンユン様のことだろう。世奈と言っても、きっと誰にも分からないはず?


「何を申しておる?」


 やはり、第2夫人は、美咲さんが何を言っているのか分からないようだ。


「だから……、そのかんざしは、私の兄上がこの巫女に贈ったものに間違いないの!」


 美咲さんが、この世界の人達に分かるように言い直した。


 だけど、どうして? なんで、美咲さんがそれを知ってるの?


「何を申す! 巫女が殿方に想いを寄せるなどあってはならぬことだ」


 第2夫人が、美咲さんを嘲笑った。


「はっ? そんな、アイドルじゃあるまいし」


 それでも、美咲さんは負けずに言い返している。私は泣いているのに、思わず笑いそうになった。


 美咲さんの言うことは、なんだか面白い。誰にも通じていないようだが、確かに恋愛禁止だなんてまるでアイドルだ。でも……、この世界で生きている私は恋愛禁止の巫女なんだ。


「そうやって人を見下してるけど、あんたはどうなの? 国王と王妃の密会をこっそり覗き見してたじゃない! そういうのを卑しいって言うんじゃないの!」


 こんなに責められているのに、美咲さんはまだ戦おうとしてくれている。だけど、第2夫人が覗き見って……、美咲さん過激過ぎる。

 そこに居る夫人達も、美咲さんの言葉に驚愕している。


 真実なのか? 第2夫人は、反論できないようだ。今までの勢いは完全に消え、血相を変えて庭園から去っていった。


「ヨナ様が、巫女を助けたのよ」「あのヘビン様に対抗できるなんては、勇敢な妃だわ」


 第2夫人は、誰に対しても横暴な人だったのだろうか? 美咲さんが、みんなから絶賛されている。


「お礼、申し上げます」


 マヤ様も、美咲さんにお礼を言っている。


 自由というか、無謀というのか……。とにかく強い! 美咲さんは本当に強い人だ!! 弱い私にとって、美咲さんは眩しいくらいに魅力的な人だ。

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