第10話美少女
「次はシウス……フレス」
その金髪美少女は右手で髪を耳に掛け、真剣な顔つきをし、走り出した。
男達の歓声があがる。
結果は及第点、というより以下だった。
「フレス……追加で、気配探知、回復力見ようか」
フレスファンの生徒は猛抗議。
「ふざけるな! 彼女はよくやった! 合格させろ!」
「そうだ! そうだ! そうだ!」
イルガはそんな声を無視し、指を鳴らした。
フレスの周囲に青色の球体数十個が出現。
「これは……」
困惑するフレスにダーツ状のナイフ二十本が投げ渡される。
「魔力源がランダムにどこかに発生するからその矢で、発生源の球体に当てるだけだ。あと、後半から本当に魔力が放出されるから回避してくれ」
まだ、フレスファンは猛抗議を続けてる。
イルガは少しやり過ぎじゃないのか。
女の子だから手加減してやれと思ったりもしたが、エリート学院ならこのぐらい試練乗りこなせないのでは、これから勝ち残ってはいけない。
フレス自身もそれは充分分かっているはずだ。
結局、フレスファンの途中の制止で前半だけで終了してしまう。
「私まだやれます」
「フレス様……もう、無理なさらず」
「あの先生おかしいんですよ」
前半の魔力探知を計測する追加試験は20本中10という平均的な結果だった。
正直言って、エリート学院の基準では物足りないだろう。
イルガは相当呆れていたが、不合格とは言わず、次の生徒に切り換えた。
「フレスは王族か、仕方ねぇや。お偉方に睨まれてもあれだし、合格してやるよ。次」
「何なんだよ! その言い方!」
「フレス様に失礼だろうが!」
フレスはゾンビのように落ち込みながら、こちらにやってきた。
「えへへ……やっぱり、私って魔術師の才能無いんだ……」
「良く頑張ったさ」
すると、クロテアと取り巻き達が嘲笑いの視線を向ける。
「フレスさんって……やっぱり、王族の力はここまで上がって来れたのね。じゃなきゃ、こんなに魔術の才能も無い落ちこぼれなのに、Aクラスに入れる訳ないじゃない。ゼルフォード君と同じでね?」
気にすることはない。
言わせておけばいい。
たかだか、テストが悪かった程度で落ちこぼれ扱いされる筋合いはない。
「クロテア……お前の魔力は素晴らしかった。それでよいじゃないか?」
「あんたに評価なんてされたくないんだけど?」
「クロテア様に向かってこの態度、なんなのこいつ」
もう、苛立ってもしょうがないので、無視をしよう。
「……ベルスト=ウディ」
鼻高い、薄い髭。小柄な筋肉質のある男。ドワーフの少年。
ベルスト農家ベルスト=ウディ。
1年Aクラス、入学試験4位。
結果は、イルガが褒める程の実力だった。もちろん、合格だった。
ウディはクールな表情で、通り際にこう言った。
「クロテアという女の子を擁護する訳じゃないが、君は目障りだ。君のような才能の無い奴が親の権力でこのAクラスに入るのが許せない。その金髪の女の子もそうだ……」
ウディの意見は真っ当だ。
努力した奴が報われなけばならない。
それにしても、このクラスは皆が敵で、張り詰めたような雰囲気で、居心地が悪い。
そうこうしている内に俺の番が来た。
なぜだかここで一気に緊張と疲れが押し寄せてくる。
「ゼルフォード君頑張ってねっ」
「……」
「無理無理、落ちこぼれ君よ」
俺は気づくと、皆にクスクスと笑われていた。
「あいつが、入学試験学年最下位か」
「なんで、こんな能無しがAクラスにいるんだ」
「やはり、貴族の力か」
100メートルを瞬時に走り、体内で幾つかの粒子から粒子集合体を構築し、手に魔力を放出し、魔力の球体を創り、岩を完膚なきまでに破壊する。
といっても、俺自体身体の中で何をやってるのほんとんど分からない。
ただ、凄いことをやってるのは分かる。
同級生達の間でどよめきが起きる。
「なんだよ今のスピード」
「魔力放出速度も凄いな。まるで、お手本だ。これが、学年最下位の実力か」
イルガは笑みを見せる。
魔力の球体は創ったし先生のこの反応を考慮すると俺は合格だろう。
「お前凄いな……だが、勝手に戻るな」
「はい?」
「もっと大きな球体を創れるだろう?」
「あの、岩を破壊したので、当初の目的達成されたはずです」
「おや? ゼルフォード君は先生に反抗するのかい? 分かった分かった。そんなにしごかれたいなら追加試験を科すから!」
俺はどこまで嫌われてるんだ。
なんなんだ……はぁ。
だったら、とことんやってやろうじゃないか。
すると、タイミング良く、授業終了の鐘が鳴った。
「さて、終了にするか」
「あの追加試験は?」
「あーもういいよ。しょうがないから合格にしてやるよ」
全く勝手だ。
そして、何とか終わり、溜め息をつきながら戻る。
「Aクラスの奴らは案外大したことないんだな! じゃあ! これで授業終了しま~す!」
そう言って、イルガは去って行った。
やっと、安堵できそうだ。
フレスは優しげな微笑みを向ける。
「凄いね。ゼルフォード君」
一方、ウディは冷たい表情は変わらず、口調だけは変わったようだ。
「入学試験最下位とは思えない……淀みなく、お手本のような魔力……だ。君、本当に一年生か?」
「随分な評価の変わりようだな」
「ふんっ……だが、僕が本気出せば、君は敵ではないよ」
そう……相変わらず敵意を剥き出しだな。
そして、終始睨んでいるクロテアという女もだ。
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