第21話 王国〜伝説の箱の中身が地図だった件〜

練兵場の外へ出ると、そこには聖女が待っていた。


「お疲れ様ですショウ様。あの結果ならあなたの力を疑うものもいないでしょう。試合を見たお父様があなたとお話したいそうです。着いてきてください」


疑うどころか化物扱いだけどな。

聖女の後に着いていくと、城の奥にある豪華な装飾が施された扉の前で止まった。

彼女がドアをノックすると中から大臣が顔を出した。

聖女が中に入っていったのでショウも後へ続いて中へ入る、そこには大臣の他になんと国王もいた。

部屋の中はベッドから絨毯までどれをとっても高級そうだ、まるで部屋中の家具から光が出ているような豪華さだった。


国王は王冠を外し椅子に座っていた、謁見の間や練兵場で見せたような威厳は感じられない。


「お父様、ショウ様をお連れしました」


ショウは国王に向けて軽く頭を下げる、冒険者だったショウはこんな時どうすれば良いか分からなかった。

国王の部屋での挨拶の仕方など、貴族ですら知るわけがないだろう。

国王は立ち上がるとショウに近づいてくる、威厳はないが威圧感はすごい。

近くまで来た国王は目を細めてショウのことを上から下までじっくりと観察しはじめた。

ショウは何もできず、ただ体を固くするしかなかった。


「お父様、失礼ですよ!」


見かねた聖女が国王を叱ると、なんと国王が涙目になりながら聖女の方を向いた。


「そんなに怒らんでもいいじゃないか。パパはお前が悪いやつに騙されてないか心配なんだもん!」


パパ?だもん?


「ショウ様は悪い人ではありませんし私は騙されていません!お父様も彼と騎士団長との試合は見てたでしょう!」


珍しく聖女が怒鳴る、怒られた国王はおいおいと泣きながら大臣に抱きついた。


「大臣〜娘がグレてしまった。国王のワシを怒鳴りつけるなんて・・・昔はあんなに可愛かったというのに」


大臣は無反応だ、もしかして国王って裏ではこんな感じなのか。

もしかしたら今自分の目の前にいるのは国王の影武者なんだろうか、ショウがそう思い始めた時国王が急に真面目な顔に戻った。


「よく来てくれたねショウ君。先程の戦い実に見事だった。君をぜひ人間側の最高戦力として迎えいれたい」


先ほどまで泣いていた男とは思えないほどの変貌ぶりだ。

ショウはその変わり様を見て影武者などではなく、彼は間違いなく本物の国王だと確信した。


「お父様、今更取り繕っても遅いです。いつものように話してください」


聖女に叱られた国王は不満そうに声を上げたが、彼女に睨まれるとおとなしく椅子に座った。


「だってワシ国王だし威厳を見せたいじゃん?少しぐらいかっこつけてもいいじゃん・・・」


小声で文句を言う国王を聖女がにらみつける、口笛を吹き出した国王を見て彼女はため息をついた。


「全く、お父様はいつもかっこつけたがるんですから。ショウ様、挨拶も終わりましたしさっさと行きましょう」


聖女が部屋を出ていったのでショウも後を追って部屋を出る。

後ろから国王がなにか言っているのが聞こえたが、聖女が無視していたのでショウも無視することにした。


ショウが聖女に連れられてやってきたのは、どうやら城の宝物庫のようだ。

宝物庫の中には古びた扉があり、更に奥があるようだった。

聖女が扉についている古びた鍵を外し奥へと入っていく、どうやら目的のものはここにあるようだ。

部屋の中心に台が置いてあり、その上にこれまた古そうな箱が置いてあった。


「この箱は伝説の英雄が残していったものと言われています。そして再び英雄と同じ力を持つものが現れた時、その者の力になるとも言われています。ショウ様にはこれを受け取っていただきたいのです。お父様にはすでに話してありますのでご安心ください」


聖女に促されショウは箱を手に取る。

大きさは10cm四方だろうか?手のひらサイズの小さな箱だ。

中を確認しようとしたが開かない、鍵がかかっているようだ。


「鍵がかかってるみたいだな、開けてもらえるか?」


聖女に箱を開けてもらおうとしたが、彼女は受け取らなかった。

何がおかしいのかクスクスと笑っている。


「その箱に鍵はありません。ただ頑丈なだけなのです。騎士たちが踏みつけても剣で斬っても傷一つつかないのです」


聖女の言葉にショウは驚いた。

結構力を込めたはずだが開かなかったのだが、そこまで頑丈だったとは。


「じゃあどうするんだ?思いっきりやって良いのか?」


聖女がうなずいたのを確認すると、ショウは今度は渾身の力を込めて箱を開けようと頑張った。

ミシミシと音を立てる箱、少しずつだが開いている気がする。

ショウがそのまま力を込め続けると、何かが折れるような音と共に箱が空いた。


「やっと開いた・・・」


ショウの腕はプルプルと震えていた、ステータスSSになって全力で力を使ったのは初めてだ。

箱の中には布に包まれた古びた鍵が入っていた。

鍵を包んでいた布はどうやら地図のようだ。

建物のような絵と文字のような物が書かれ、布の中心には✗が付いていた。

地図の下の方にも文字のような物が記されていたがショウには読むことができない、どうやら古代文字のようだ。


「我が歴戦の友、ここで次の主を待つ。と書いてありますね。一体何のことでしょう?」


横から地図を見ていた聖女が読み上げてくれた、どうやら彼女は古代文字が読めるらしい。


「聖女様、この✗の場所はわかるか?」


読めるのならばちょうどいい、✗の場所も彼女に考えてもらおう。

聖女に布を渡すと彼女は顎に手を添えて悩み始めた。

しばらく考えた後、どうやら場所がわかったようだ。


「この場所は・・・。このお城のすぐ近くですね。恐らく馬車で1時間ほどの場所だと思います」


馬車で1時間か、ショウの足であれば10分もあれば着くだろう。

悩んでいても仕方がないので、早速その場所へ向かうとしよう。


「聖女様その✗の場所を今の時代の地図に写してもらえるか?ちょっと行ってくるよ」



聖女に連れられて一番最初の部屋へ戻ったショウは、彼女の帰りを待った。

地図の準備ができるまで少しかかるということなので、その間この部屋で待つことになったのだ。

ショウは待っている間にお宝が何なのかを考える。

伝説の英雄がわざわざこんなことをしてまで残すお宝だ、きっとすごいものに違いない。

ショウがワクワクしながら妄想していると、聖女が戻ってきた。


「ショウ様お待たせしました。現在の地図ではそこはどうやら森の中のようです」


ショウは聖女から地図を受け取ると✗の場所を確認する。

確かに森の中だ、こんなところに何があるというのだろうか。


「ありがとう、とりあえず行ってみるよ。何かあったとしても夜までには君のとこに帰ってくるってことでいいかな?」


何もなければ次のダンジョンへ行こうとも思ったのだが、スライムちゃんの呪いが再発したときのことを考えると聖女には一緒にいてもらったほうが良いだろう。

聖女はショウの言葉を深読みしたのか顔を赤くしていた。


「わかりました。お気をつけていってらっしゃいませ」


彼女と城門で分かれ、ショウは一人で城下町を下る。

町の外へ出ると、ショウは✗マークの場所へ向けて全速力で走り出した。

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