第2話・3つのレース
¥4000万を叩き出すため、
覚えていた高配当のレースは4つ。
1つは買う術がなく、残りの3つのレース。
1992年天皇賞・秋
1着 レッツゴーターキン
馬連 177.2倍
3×172.2=¥516万円
俺は16歳だったが4つ上に競馬好きの兄がいたので、兄に買ってもらった。
兄は大金にビックリしていた。そんな大金、16歳の少年が持っている事を親にバレる訳にもいかず、兄貴には¥50万の口止め料を渡し、後に車とバイクを買うために残すと言い訳をした。
この馬が天皇賞に穴を開けた事を覚えていた。
1995年セプテンバーステークス
1着 ミラクルドラゴンズ
馬連 183.6倍
5×183.6=¥918万円
馬券を買うマークシートは登場していたが、それを窓口のオバちゃんに渡していた頃。
まだ19歳だったが窓口のオバちゃんには怪しまれずに買う事ができた。
一緒に中山競馬場に行っていた同い年の同僚は童顔で、窓口のオバちゃんに、
「お父さんに買ってもらってねぇ〜」
と、スムーズに買えなかった様子。
この同僚が競馬経験が無く、愛知県出身という理由だけでミラクルドラゴンズの単勝万馬券を当てていたのを覚えていたのだ。
他にも一緒に行っていた同僚がいたので、¥5万の馬券を買うのを見られてもマズいので、トイレの隙に1人で買った。換金も後日地元に戻った際に1人で。
この事から俺の地元が東京圏以外、札幌、函館、福島、新潟、中京、京都、阪神、小倉の競馬場に行ける範囲と分かってしまう。
2000年秋華賞
1着 ティコティコタック
馬連300.7倍
9×300.7=¥2706万円
競馬界のレジェンド武豊の実弟、武幸四郎の初G1勝利だ。馬名が印象的で覚えていた。
しかしこの大きな配当には参ってしまった。なんか急に怖くなった。
高額配当金は別室での現金手渡しで、これで3回目なのだが、カバンに入れて案内された部屋から出ると、俺を狙ってる人がいるような気がしてきた。
結果を知っての高額配当の後ろめたさからなのか、
コレで最後という気持からなのかわからない。
とにかく駆け足でタクシー乗り場へ向かった。
俺の車は競馬場から徒歩数分の駐車場に入れていた。
運転手にそこを指示すると…
「万馬券取ったんですかぁ?」
とイヤラしく運転手に聞き返された。ような気がした。
こんな近くにタクシーを使うなんて、運転手にとっては雑談のつもり、せいぜいチップを期待する程度だったのだろうが、俺の緊張は最高潮に達し答える事が出来なかった。
一万円札を渡す事で、運転手に確証を持たれるのも怖く、期待どおり釣りはいらないと千円札を渡した。
自分の車に乗り込み、ロックをしてやっとホッとする事が出来た。
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