ハイハーバーと風の谷と田舎都市と自分

 



 バイパスのインターを2つ通り越したところにあるホームセンターなら、10円~20円安く買えるスティック糊を、アパートから車で2分のところにあるコンビニで買った。ついでに、使い捨てライターも念のために買った。

 肩こり用の塗り薬を、車で2分のところにあるドラッグストアで買うか、歩いて3分のところにあるドラッグストアで買うか迷いながらアパートの階段を降りたけど、結局、歩いて3分のところにあるドラッグストアに車で行って買った。

 同じく、アパートから歩いて3分のところにあるスーパーマーケットに立ち寄って、牛乳パックを買って、ついでに、煙草を2箱買った。

 夕方のラジオで、「音楽自体に実態がないからこそ、せめて、僕はCDを買っている」というどこかのコメンテーターの話を聞いたばかりだけど、僕は、レンタルショップに行くことなく、アパートにあるPCで、あるアルバムの中の1曲をダウンロードして購入した。


 山も空も大きく見えて、わき道に入ればすぐに雪に埋もれた田んぼばかりの田舎ながら、こうして、アパートを中心として、どこの地方都市に行っても同じ看板が並ぶお店に囲まれて、特に生活するのに不便を感じない2年間を過ごしてみて、

(もう、これ以上、便利にならなくていいだろう)と、つくづく思う。


 世の中がこれ以上便利になったところで、自分の収入が増えるわけではないし、月に旅行に行けるほどの財力もないのなら、もう、これ以上は望まない。

 このPCもキーボードも、何とかクリーナーでたまにきれいにしてあげるから。

 モニターは、ほんとは、もう少し鮮明できれいに映るやつがいいな、とは思うけど、これで不便しているわけでもないし、OSだって、サポートが切れる期限ギリギリまで使ってあげるから、どうか、僕の家の新聞に、虫眼鏡で見ないと読めないような電気店のチラシは入れないで。

 どうせ、いつだって、どこの店だって、トイレットペーパーやシャンプーは安く売ってるんだから、スーパーやドラッグストアのチラシも入れないで。ついでに、惣菜は19時を過ぎればみんな半額になるんだから、チラシに載せないで。

 美味しいお店を探すより、美味しい作り方を探すほうが面白いから、どうか、新しいダイニングバーを作らないで。

 美味しかったらブランド関係なくまた買うから、偽表示とか、賞味期限誤魔化しとか、そんなに気を遣わないで。


 総中流階級意識かなんだかわからないけど、僕は、これでいいから。

 “車で何分”だけが命のこんな地方田舎都市だけど、ここに住みながらも、気持ちの中では、“ハイハーバー”や“風の谷”の生活スタイルがいいなって思っている僕だから。

 企画・製造している職に就いている人には申し訳ないけど、便利なものは、本当に困っている人のためのものを作って。

 アニメーションみたいに、僕は毎日、同じ服は着ないけど、あそこでの生活スタイルが僕はいいと思っているから。





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