オアシスの草舟




行ったことがないから 砂漠がどんなところか俺は知らない

だけど 君はオアシス と呼べる存在だった


でしゃばらず控えめなのに 愛には貪欲だった

とても怖がりなくせに 俺なんかを受け入れて

制御ができない自分をよく知っているのに

制御ができない状況になることを知らなかった



向こう岸が見えないほど豊かに湛えたオアシスで

むさぼり 

歓び

溺れ

流され

泣いて

慰め

決めて

押して

賭けて

枯れて


そして最後は

残った僅かな水に小さな草舟を浮かべることにした君を岸で見送った



草舟の乗員定員は2名




俺じゃない人よ

浮き輪は俺が持ってるから

向こう岸まで無事に辿り着いてくれよ







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る