冬 景 色



風に押されて重くなったドアをやっとで開けて外に出ると


行き場がなくてようやくたどり着いた雪が 階段のあちこちに吹き溜まり


アスファルトは黒く濡れ


もしくは 白く化粧をし


信号の赤は その色をさらに輝かせ


信号の青は 頼りなく


信号の黄は 降りゆく雪にその色をかき消され


屋根の上に積もった雪は 車でどこかへ運ばれ


サッシは 子どもの鼻の頭の汗のように細かい結露に覆われ


夜のスーパーの駐車場は まばらな車でその広さを持て余し


空は 夜でも灰色に輝き


その灰色の空に 少し濃い灰色の雲が目に見えて流れ


工場から吐き出される煙は 真横に流され


やはり 夜になってもその煙は白く


冷たい缶コーヒーは 人々の目には止まらず


普段は街専門のカラスたちも 白い雪原となった田んぼに降り立ち


少し離れた場所に居る白鳥は かろうじてその存在を確認でき


とっくに穂を失くしたススキは それでも強風に折れることなく


うどん屋から出てくる帰りの客は コートの襟を立て


ヤッケの帽子をかぶった子どもは わけもなく走り回り


道路を歩く老婆は 傘で顔を隠し


その頼りない足元だけを見つめ


傘がない僕は 頭を白くさせて


わざと 冷たい缶コーヒーを買ってみたりするんだ




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