第3話クノイチリーダーとの別れ
「もう行ったか?ノエモンは...」
ふと、声が聞こえた方を向くとそこには見覚えのある顔立ちの男が立っていた。
「村人X。俺は職業転生で勇者になったんだ。鏡から名も貰えた。名前はユウタだ。」
その時村人Xはやっと思い出した。その男は村で一番貧困な家で生まれ育った通称ビンボーンだった。
だが、今はビンボーンではなく、ユウタという名になっているらしい。
「ユウタ。なにがあったんだ?この状況は。村の人たちがいないのだが...」
村人Xの理解力の速さに驚きつつもユウタは村人Xが消えてから今に至るまでの間を話し出した。
「よく聞いてくれ。まず、お前がいなくなったすぐ後にみんなはお前を捜すことになったんだ。突然消えたからまだ近くにいると思ったからな。だが、どこを捜しても見つからず内心みんな焦ってたんだ。するとそこで何かの叫びのようなものが聞こえたんだ。それで近くに行ってみると、獣がいたんだ。最初はノエモンが俺が見てくる!と走って行ったものだから俺たちもすぐに追いかけて行ったんだけどいつのまにかみんなとはぐれてしまって、それで今に至るんだ。」
どうやら、村の人たちは俺を捜しているらしい。だが、なぜノエモンが行ってから声を掛けたのか疑問に思ったので聞いてみると。
「なぜあいつを避けているか?そんなの見てわかるだろ!神魔獣を連れてるんだぞ?迂闊に近づいたりしたらなにをされるかわからない。だから近寄りたくないんだ。」
村人Xはなるほどという顔をしつつも、ある疑問が生まれた。
「なぜ俺は神魔獣に恐れられなければならないのか。」という疑問だった。
だがその理由はすぐにわかった。
神になったからだと。神になることによりこの世界で一番権力が強くなった。だからこそ恐れられるようにもなってしまった、と。
それを考えると同時に俺は、神は心の優しいものだぞ。と分からせて皆平等だということを世界中で分からせるということを目標に改めて歩き始めるのだった。
「ユウタ、俺といれば神魔獣なんて怖くないんだ。」
「俺はどうやら神になったらしい。」
「神魔獣がそう言っていたんだ。」
「え...?どういうことだよそれは」
相当戸惑ってるユウタに村人Xは冷静に説明した。
「鏡の前で俺が消えたのは知ってるだろ?その時に俺は光に包まれていたんだ。そして女の人がいて、その人にあなたは第2代目 神 の座に選ばれました。これより、1代目の 神 から引き継ぎの作業がございますので、一緒に来てください。と言われたんだ。そしてそこで俺は1代目の神さまと出会った。神さまは最初は優しく対応してくれたんだけど、一対一で戦うことになってそこからもう俺の記憶がないんだ。」
「でも記憶に無いなら神に消されたってこともありえるし、神になんてなってないんじゃないか?」
その話を聞いたユウタがそう言った。
「いや、俺も最初は信じていなかったんだけど、どうやら本当に神さまになっていたらしい、その証拠に俺が神魔獣のそばに行った時に神魔獣は怯えていたんだ、それに俺に向かって神になっていますとも言っていた。」
そう言うとユウタはしぶしぶ認めた。
「じゃあ、お前は本当に神になったんだな、おめでとう。」
ユウタは素直に祝ったがその直後質問してきた。
「神になったならなにをするんだ?神さまって職業なんだろ?まさかこのままなにもしないで過ごすのか?」
???「それはありません。」
ふと横を見るとまた見覚えのある人が立っていた。
ついさっき会ったような感覚だったが名前を言うまでもなくその人は消えてしまった。
「どうしたんだ?急にぼーっとし出して、何かいたか?俺にはなにも分からなかったぞ?」
ユウタが焦るように口走ると村人Xが静かに口を開いた。
「今、あの時の女神のような人間に会った。これから天界に行くらしい。」
ユウタは驚いた顔をしていたが、すぐに話し出した。
「行ってこい!お前がいなくなったことは全て俺が説明しておく!頑張れよ!」
そう言うとユウタは森の中に入って行った。
女神「準備はいいですか?」
微笑みを浮かべながらそう言うと村人Xは空へと飛び去った。
天界に到着した村人Xは改めて自分が神になったことを知る。沢山の女神からのお出迎えだ。その中にはなぜか見たことのある顔が一つあった。
???「村人X!なんであなたがここにいるの!」
ふとそちらを見るとそれはクノイチリーダーだった。どうやら聖女と出ていたがそれは女神という意味だったらしい。少し理解し難いが理解することにした。
「俺、神になったみたいなんだ。」
少し照れ臭そうに村人Xが言うと
「え!そうだったの!じゃあ早く私を解放してよ!」
なぜかすごく急いで言ってるように感じた。
???「やめなさい。貴方の言葉遣いは神さまに対して相応しくありません。これは一から基礎をやらなければなりませんね。」
そう誰かが言うとクノイチリーダーはどこかに連れていかれてしまった。
村人Xは大丈夫なのかな?と思いつつも、クノイチリーダーを後にした。
「こちらへどうぞ。」
そう言って案内されたのは白い壁の部屋だった。
「ここで神さまは暮らしていただきます。」
そう言って案内された場所は大きな書斎だった。
「この書斎は神さま専用の場所となっております。なのでここでゆっくりと過ごしていてください。また何か用がございましたら私のことを呼んでいただければ直ぐに向かいます。」
そう言うと出て行こうとしたが名前を聞いていなかったので呼び戻した。
「すまないが君の名前を聞いていなかった。なんて名前なんだ?」
そう村人Xが質問すると
「私に名前はありません、しかし付けて頂けるのであれば光栄です。」
女神にも名前が無いことにはびっくりしたがその女神にはこれからもお世話になりそうなので名前を付けることになった。
「きみに名前を付けよう。どんなものがいいだろうか」
そう村人Xが聞くと女神は
「どんな名前でも名前を頂けるのは光栄な事です。」
そう言うと女神は静かに目を瞑った。
「うーん、じゃあきみの名前は...これにしよう!」
「ミコ。これがきみの名前だ。」
そう言うとミコは立ち上がり目に涙を浮かべていた。
「何百年と生きてきましたが今この瞬間が一番嬉しいです。ありがとうございます。大切にさせていただきます。」
名前でここまで喜ばれるとは思っていなかったので多少はびっくりしたが、なによりも喜んでもらえて良かったと心底感じた。
ミコは微笑みを見せると村人Xのそばから姿を消した。
机の上を見ると神さまのマニュアルのようなものが置いてありやるべき事が書かれていた。
やるべき事1女神に挨拶をする。
これはさっきやったからいいかな。
やるべき事2このマニュアルに目を通す。
なるほど手順ごとに書いてあるのか、なかなか便利だな。
やるべき事3神さまを楽しむ!
「?!ここで終わってる。何をするべきか全く書かれてない!どうすればいいんだこれ。」
ものすごく焦りが出てきたが少し目を凝らしてみると、下のところに小さく4が書かれていた。
やるべき事4ここから下は自分で書き足してやるべき事を増やす事ができる!この能力を使って神さまを有意義に生きよう!
「なんだこれは!こんな能力があったのか!早速書いてみよう!」
村人Xは早速一つ書いてみた。
やるべき事5美味しいものを食べる。
書いた瞬間少し音がするとミコが呼びにきた。
「お食事の用意が整いましたよ!直ぐに食堂にいらして下さい!」
村人Xはこの能力は大変危険な能力だという事に気付いてしまった。どうやら自分以外は全く能力に気が付いていないようなのだ。つまり能力を使えばどんな人間もどんな動物も言いなりにできてしまう。そんな能力だ。だが決してやましい事に使用するなど考えてもいなかった。今考えていたのは下界の人々の平等化だ。そのために自分は天界で神様をやる事になったと信じ、これからを有意義に生きる事を心に決めた。
続く
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