第2話

山田シロウ、22歳、K大学三年、一年の浪人期間を経て大学に合格、田舎から出てきて一人暮らし。

頭はそれほど良くない、が努力はしたと思う。受験勉強だって人一倍やったはずだ。いくら時代が時代だからと言って、勉強ができなければ大学には入れない。そもそも大学自体の難易度は上がってきていると思う。十年前だったら馬鹿でも入れる大学があったと聞くけれど、今じゃそんなものは存在しない。経営困難による大学の閉学、合併が相次いだ。これが7年前のことだ。少子化に加え政府の衰弱化による補助金の減額。今までゾンビのように生きながらえていた大学たちもぞろぞろと潰れていった。テレビのキャスターは、何十年前にあったバブル崩壊後の銀行のよう、って言っていたか。大学進学率も下がり、街には非正規雇用者があふれていった。

 ただ、難関の大学には入りやすくなったかもしれない。力のある大学は揺るがずに教育を続けていく。そこに少子化が加わればライバルは少なくなるということだ。まあそういう大学は外国人が我が物顔でキャンパスを歩いているが。

 『グローバル』、世界はそこに向かっている。技術の発達により、距離は問題ではなくなり、いつでもどんな情報でも手に入る。人の移動は盛んになった。それはこの島国でも例外ではない。いつまでもガラパゴスでは生きていけないのだ。

 国という概念は次第に薄くなり、ついには消えていくだろう。

 そのとき、人々はどこに帰属意識を持つのか。

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