第122話 ベスの家族

 騒ぎが一旦収まるまで城の中には入れない、ここからは用心しなくては、そーちゃんも常に結界張っておくから、魔法は使えないよ?


「きゅい!」わかった、ぶつりでいく


 ベスもそーちゃん位鍛えられれば良かったが逃げ足だけが早くなって、もうクラスじゃ一番だよね、いつも金メダル。


「にゃんか言われてる気がするにゃ」


 ベスって足速いよねって、話してた。


「にゃー!照れるにゃん!」


「きゅい!」これが、ちょろい!


 段々俺に似てきたのは勘違い?俺の欠片が入ってるならそうなってもオカシクはない。





「王よ、将軍は牢に入れて来ました、自警団も集まり城の中を点検中です、ロビーまではお入り頂けます。……申し訳ありません、皆様、此方の不手際のせいでお待たせしてしまいました、外よりロビーの方が寛げるかと。」 


 そっすねー何か生ぬるい視線が飛んでくるし、城の中に入りましょうーと、そそくさ、皆で入ります、ロビーといえどそこまで広くない、木の上に出来た城だ、魔法も無いのに良く出来たもんだよね?今城に入れてくれた猫、宰相さんなんだって、右腕みたいな?


「ポチはにゃーと離れちゃ駄目にゃよ?」


 えー何で?


「なるべくなら仲間なんだと、ハッキリ見せつけた方が良い事もあるんです。」

 

 さっきの猫さんだけど、メガネしてる、何この衝動!メガネ割りたいっ!


「あの、何故攻撃姿勢なのか……」


「ポチっ!なにやってるにゃ!?」


 分からないっ!何故か俺の記憶がメガネを壊せと言っている!


「どんにゃ記憶喪失の仕方してるにゃ!」


「ああ、記憶がないのですか?お可哀想に」

 

 と、言いながらさっとメガネを外す。


 おお?何だ衝動が、消えた……メガネになんのトラウマがあるんだろ?


「にゃ、それを聞きたいのはこっちにゃよ、メガネ掛けてれば誰にでも反応するのにゃ?」


 分かんない、ただ、メガネにだけ反応しそう?と宰相さんがさっとメガネをベスに掛ける、ぬおっ!しょ、衝動がっ!!


「な、にゃにするにゃ!」


 直ぐ外した、すっと収まる。


「いえ、本当にメガネだけなのか、参考に」


「ひ、酷いにゃ」


「ははは、中々面白い仲間だ、犬と言うのはいけすかない連中が多くてな、あれと比べたらイカンな、ちなみに我らと同じ二足の犬よ」


 えっ!二足の犬も居るんですか!?可愛いんですか?俺とどっちが可愛いですか!


「可愛さを競うのか?もちろん、断トツで仲間のポチ殿が可愛いぞ?」


「王に同じく、一緒にするのも、失礼な程可愛くて御座いますよ。」


「そうにゃ!あいつら野蛮なんにゃ!」


 成る程、戦争でもしてるの?


「いやいや、そんなもんは民を傷つけるだけよ、戦争なんかせんわな。」


 ほう?つまり普段の行いやらでいい目で見られ無い訳ね、オッケー、負けない!


「ポチはにゃにと戦ってるにゃ?」


 可愛さを追及する!野蛮など愚かよ!


「斬新にゃ戦いにゃ!」


「己との戦い……成る程、深い。」


「王?お疲れですか?」



 ササッと白いエプロンの猫さんがお茶を用意、俺達はミルクだ、どんだけ子供に見えるの?美味しいから貰いますけど。


「ぬ、待て毒味させよう、少し待て」


 いや、鑑定っていう魔法があって、なに入ってるか分かるんで大丈夫ですー。


「そうにゃんにゃ、ポチは万能なのにゃ」


「ほうほう、興味深い、魔法とは何処で手に入れたのだ?」


 この世界には無いですよ、俺別の世界の生き物らしくてー?


「む?む?ど、どういう事だ?」


「いつも言ってるにゃよ、別の世界の話、中々おもしろいにゃよ?」


「む?空想……ではなく、か?」


 うーん、記憶にはっきりあるのは別の世界の事なんですよー?因みに神様いわく、世界なんて腐る程あるらしくて、こんな世界なんて鼻くそ程度だって言ってた……でもモナが言ったんじゃない……誰だっけ?


「ほほう、神様と話が出来るのか?それは素晴らしい!突然現れた神の一部かもしれん?」


「にゃ?なんにゃ?神の一部にゃ?」


「まぁ神話の一部ですね、神が戯れに自身の欠片を地上に落とす、等。」


 んーそんなんじゃない、戯れに落とすんじゃないよ、使命があって……何の使命だっけ?


「ふーむ、所々記憶の欠落が有るようだな、本当の話だったらのことだが、神話を迂闊に信じ込むのは危険だからな」


「?にゃんでにゃ?」


 神なんて空想で見たことも無いもんを盲信して戦いなんて起こすからな、録でもないよ?


「ほう?己を神の一部と語りおる傍らで否定しおる、不思議なもんだ、だがその通りよ」


「きゅい?」おかわりしていい?


 あ、お腹空いてた?ごめんね、ミルク以外も平気だよね?


「きゅい!」なんでもたべる!


 な、なんでもなの?取り敢えずお菓子あげるね?猫のおやつなんだけど口に合うかな?


 そそくさと召喚でちゅーを、取り出す、爪で先端を切って、チロチロと出す、ほら舐めて?


 ペロペロ……「きゅい!?」おいしいっ


 もう夢中でペロペロ、前足でちょっとづつ出していく。


「な、なんにゃそれ!芳しい匂いにゃ!」


「う、うむ、極上の匂いが……」


「すーはーなんて素晴らしい匂い……」


 やっぱ猫なんだな、でもあげられないの。


「にゃ!?にゃんでにゃ!?」


 これは特別な方法でしか手に入らない、癖になると可哀想だからあげられないの。


「にゃーー!食べたいにゃ!」


「むむ、理論は分かるが本能がっ」


「悔しい事に同意で御座いますっ」


 ごめん……今度は居ない時にするわ。


「がーん!もらえにゃい……」


「宰相よ、外の空気を吸おう、いかんぞ!」


「はいっ!なんという誘惑!」



 何かすいません……


 片付けに来た白いエプロンのメイド?猫さんもソワソワしてた、香りが残ってたみたい。


「うぬ、ここは危険な匂いに満ちている!移動しようぞ。」


「はい、直ぐに、王の間へ行きましょう!」


「にゃふー吸っていたいにゃー」


 パパ上がベスをズルズル引っ張ってロビーから連れ出す、クンカクンカ忙しない。



 急いで王の間へと駆け足、途中のメイドさんやら警備さんが驚いているが止まらない!


「ささっどうぞお入りください。」


「うむ!」


「にゃー!消えてきたにゃ!!」


 恐るべきちゅーの匂い……


 バタンと閉めた所で三匹がため息、ベスが俺を睨むけどやんねーよ!


「にゃ!忘れられない匂いにゃ!マタタビより危険な香りにゃ!」


「うむ、うむ、一生の思い出にしよう。」


「はぁー幸せでした。」


「きゅい!」またほしい!


 おやつは一日一回ね?


「きゅいきゅい!」おやつ、たのしみ!


 クルクル縦に回るから目が回りそう。



「さて、勢いで来てしまったが、良いだろう、宰相、妻と兄妹を此処へ。」


「畏まりました。」


「にゃーすーちゃんに匂いがっ」


 近づいてクンカしようとするので阻止!浄化ブッパなのよー!!


 王の間を埋め尽くすキラキラの輝き。


「きゅいー」きれい


「おおっこれが魔法か……素晴らしい。」


「にゃっ!?匂いが、消えた、にゃ……」


 ふはは、絶望しろ!


 浄化の光が消える、室内が清浄な空気になった、うーんいいかほり。


「にゃんでにゃ!もっと嗅いでたかったにゃ」


 変態臭いぞベス……


「……にゃ、にゃんでもにゃいにゃ?」


 にゃーにゃー!五月蝿い!


「怒るにゃよ!ごめんにゃ!」



「あら?騒がしいと思えばベサーレス、やっと帰ったのね?ママ嬉しいわ。」


 ぬおっ!気品溢れる猫のマダムー!ママ上ですか……何でまともな親からベスが?


「にゃー母上にゃ!久しぶりにゃ!」


「……なんです?その口調?」


「にゃ、にゃにって……猫らしいにゃ?」


 幼い頃は普通だった模様。


「まぁ……どうしましょう?兄妹に合わせて良いのか不安だわ、あなた?」


「む?そうか?……修行で個性が身に付いた、でいいのでは?」


「はぁーあなたはベサーレス可愛いものね?ちゃんと、教育しないからこうなってしまうのよ?お分かりかしら?あなた。」


「むっ……むむぅ……」


 弱っ奥さんに弱っ!


「にゃーは個性が大事だとおもったにゃ!だからこれでいいのにゃ!」


 そんなに大事か?時期王様だろ?にゃーにゃー五月蝿い王様もどうかと思いますぅ。



「個性で何でもかたがつくとお思いなの?やーね?甘ったれは変わらないわー……所でそちらに居る可愛い子達は何かしら?」


「にゃ!にゃーの仲間にょよ!」


「そう、やはり一人では修行は無理だったのね?犬殿に助けられたと聞いたわよ?」


「ど、何処でそんにゃ情報を、にゃ」


「まぁ、可愛い息子のですもの、監視位してたのよ?犬殿に迷惑ばかり掛けて全く。」


 怖っ監視されてたの?探知に引っ掛からなかった!暗殺部隊なの……


 くるりと、俺達に向かって来る、やだこあい……でも綺麗な美猫さんだわ。


「きゅい?」やっつける?


 止めなさい、何かの知れない返り討ちに会いそうで怖いです……



「こんにちは、可愛い子達、特に犬殿には息子がご迷惑掛けて申し訳なかったわね?」


 いえいえ、助けられたのも事実ですから?


「ふふ、そうね、でも直ぐに逆転したわ、情けない息子なの、ご免なさいね?」


 あ、はい……でも楽しいですよ本当に。


「そうですか?記憶喪失は大変ね……息子が居て寂しい処ではなかったかしら?ふふ」


 まただよ、あらあらうふふ二号……


「あなた達にも兄妹を紹介しますわ、抱っこしてもいいかしら?」


 とうぞ!遠慮なくー


「あら、ふふ、綺麗な毛並み……羨ましいわ?ほぼ野良の生活していたのに不思議」


 一応綺麗にする魔法がありまして、はい。


「そうなのね?魔法というのは便利ねぇ」


 そーちゃんと一緒に抱っこされて、毛並みを確かめるように触る、何かもどかしい。



「んむ、王妃よ、犬殿の感謝はそこまでにして、早くベサーレスに兄妹を会わせては?」


「……そうね、ベサーレスもお父様の近くに行きなさい、宰相が連れてきますわよ。」


「はいにゃー……」


 抱っこされたまま、王様の隣の椅子に座る、いいのかな?犬嫌いだったらどうしよう。


「心配ないわよ?ベサーレスみたいな性格はしてないもの、教育は大事よね?」


「むぅ、そ、そうだな……」


 パパ上が認めたし、ベスよ哀れなり。


「うにゃー百五十年は頑張ったにゃ、少しは誉めて欲しいにゃ……」


「そうね、可愛い子達を見つけたのは偉いわ」


「にゃんか違うにゃり!」



 コーンコーンと木の叩く音、んん?


「おお、来た様だベサーレスしっかり挨拶しなさい、長男だからの?」


「は、はいにゃ!」



 ドアが開いて宰相が両手に二足の子猫を連れてる、何あれ可愛い!自然と雄と雌が解る。


「さぁ、お兄様ですよ、修行から帰還したのです、ご挨拶しなさい?」



「はい、初めましてお兄様、次男のユッタ=ベゴーニャ一です五十歳です!」


 しっかりしてるぅ!


「はじゅめまして、おにいちゃま、長女のロレンテ=ベゴーニャ一れす、二十歳れす」


 きゃわいいー!


「にゃ!長男のベサーレスにゃよ!初めましてにゃ!可愛いにゃね?二百歳にゃよ?」


 まだキャラ維持するつもりか!


 ほらね!兄妹が困惑顔だよー!


「ほほほ、長男は修行で何処か可笑しくなったみたいですわ、いやね?でもちゃんとお兄様ですからね?安心なさい、二人とも。」


「は、はい、修行お疲れ様です……」


「しゅぎよ?おちかれさまれす?」


 ほっこりーしたいけど兄妹がギスギスしてるわー……ベスよこんな時位しっかりしろ。


「母上、にゃーは可笑しくないにゃ、普通にゃよ?酷いにゃー!」


「お黙りなさい。」


「はいにゃー……」


 次男がドン引き、長女は?な感じ。

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