固有名詞の聞き方

 霊視をしていて、一番難しいと思うものは、人の名前や見たこともない物の名前――いわゆる固有名詞を知ることである。


 理由はいくつかある。ひとつずつ話していこう。


 心の世界で会話をする時はこんなことが起きる。神様に突然こう話しかけられたとしよう。


「先日の話ですが……」


 おそらくこう思うのではないだろうか。


 いつの何の話?


 物質界では、これでは相手に話が通じないが、心の世界では、言葉にプラスして映像がイメージとして現れる。そのため、まるで映画を見るように、神様が指し示している場面が頭に浮かぶ。すると、


 昨日した睡眠についての話。


 というように、きちんと伝わる会話になる。話している言葉が短く、内容を理解するのが少々遅れるという時差が起きることもが、それはそこまで気にすることはない。幽霊や神様はきちんと待っていてくださる。


 つまり、


「本を読んでください」


 という言葉を神様から聞いた時、声はもちろん聞き取れるが、同時に本のイメージが浮かぶというわけだ。


 ある意味、物質界よりもスムーズに意思の伝達ができるようになっている。


 それでは、次の問題点に移ろう。幽霊と神様は何語を話しているだろうか?


 改めて聞かれると、首をかしげるのではないだろうか。物質界とは違って国境はない。つまりは共通語がある。日本語ではないのはわかるだろう。


 では、英語なのだろうか。それも違う。実は地上には存在しない、帝国語というものを話している。


 私たち人間に話しかける時は、聞き取れる言語にわざわざ置き換えて話してくださっているということである。


 筆者も人間で、日本語が母国であるため、帝国語がどのようなものかは詳しく知らない。ただ、他の言語を訳す時に出くわす、言語のずれというものはよく生じる。


 この言葉にぴったりあう翻訳がない。

 この言葉の読み方をきちんと再現できる響きがない。


 こんな経験はあるかと思う。幽霊や神様が使っている言語は地上には存在していない。ということで、このずれが非常に大きく出てくることもある。


 当たり前のことだが、マイケルさんは、日本語に訳しても、マイケルさんである。固有名詞は他のものに置き換えることが困難である。


 イメージとして、名前を知らない人を映像で出していただいても、固有名詞はわからない。つまり、非常に正確な霊視が必要となるということだ。


 そうして、最後にもうひとつ。日常生活でもそうだと思うが、初対面の人の名前をうかがう時聞き逃した、聞き取れない。ということは起きないだろうか。


 聞きなれた名前ならば、割とすんなり入ってくるが、珍しい名前であると、聞き取れなかったということが起きるだろう。


 書いて教えてもらうということが物質界ではできるが、心の世界である霊界や神界では、書いてもらっても、自分が心で読み取れなければ、文字は見えなこない。何となくこんな形の字ということまでは追えるが。


 人の名前や物の名前――固有名詞は既成概念がない。花の名前や事柄でつけられた人の名前ならば、イメージを幽霊や神様も送れるが、映像がないものはどうすることもできない。だからこそ聞き取るしかない。


 そういうわけで、名前の霊視は非常に難しいのである。


 それでは、筆者の固有名詞の聞き取り方の紹介しよう。


 まずは、音――響きを幽霊や神様に言っていただく。神経を傾け、よく聞く。聞こえてきたものをメモする。カタカナでもひらがなでもいいので、とにかく書き留めておく。


 この作業だけで非常につまずくこともあるが、諦めずに何度も聞き返したり、審神者を行なって、練習をする場にも変えていこう。


 次に移る前に、霊界と神界でのルールである。どんなに横文字の名前であっても、漢字表記が必ずある。そのため、漢和辞典が必須となる。


 地上にない漢字を使っている時もあるので、その時は神様とよく相談をして、別の漢字を用いることはよくある。


 聞こえてきたものを、できるだけすんなり受け取れるように、どんな名前があるのかの例を挙げていこう。参考にしてみてはどうだろうか。


 神様に許可をいただいたので、彼らの子供の名前を使って紹介しよう。簡単なところからいこう。


 みさき→美咲

 きっか→菊花


 ここら辺は比較的、聞き取りやすい上、漢字探しで引っかかることもない。ただ、物質界と価値観が違っているので、性別に注意しないといけない。ちなみに、


 美咲ちゃん。

 菊花くん。


 である。次は当て字が用いられている名前である。


 らんじぇ→蘭星

 ぜっしゅ→善珠


 横文字の名前が、漢字変換された例である。ちなみに、


 蘭星ちゃん。

 善珠くん。


 それでは次。神様は地上の言語はすべてマスターしている。そのため、他の言語の響きと混じることもある。

 

 うぃろー→我論

 めふぃー→芽吹


 どちらも男の子の名前だ。

 我論は『我』が複数形になり、英語のweから来ている。つまりは、みんなの意見――協調性があるという意味である。

 芽吹は我論よりも簡単で、次々に新しく芽を出して欲しいという願いから来ており、親の神様は芸術関係の仕事をしているため、このような綺麗な響きに変えられている。


 それでは、高レベルの聞き取りにいこう。先ほどまでとは逆に、漢字を先に書く。


 咲珠李庵。

 輝富威流。


 下の名前だけである。ちなみにどちらも女の子である。このふたつの名前は、日本語では表す響きも漢字もなかった。親の神様と散々話し合った結果、これならば許可をするということになった。


 咲珠李庵→さしゅーりゃあん

 輝富威流→かかふぃりゅ


 神様の奥さんが、もともと日本の人ではなかったことが、この名前となった理由だそうだ。


 最後に、親の名前をそのまま子供につけるということも時々見受けられる。


 例えば、


 夕霧命ゆうぎりのみことという神様がいる。比較的新しい男性神である。子供の一人は夕霧である。

 しかし、正式名称は違う。


 男子は十七歳になるまでは、名前の後ろに必ず『童子』がつく。つまり、子供の名前は、夕霧童子が正式名称。


 しかし、親しい間柄で、呼ぶ時は親も子供も『夕霧』である。どちらかわらかないのではと思うかもしれないが、先ほど話した映像が浮かぶので、大人を呼んでいるのか子供を呼んでいるのか誰にでも判断がつく。


 女子は名前の後ろに必ず『姫』がつく。これは、成人してもはずれることはない。なぜなら、女性神の正式名称は、最後に『姫』が全員つくからである。


 ということで、男子は大人になると改名する人が多い。


 前の章でも書いたが、神様の本名の響きは日本語に近いのに、漢字表記が珍しいということは、意味を重視しているからである。


 明引呼あきひこさんは、明るいものを引き寄せ、呼び込むという意味である。

 貴増参たかふみさんは、とうといものがたくさん増える。『三』はたくさんという意味である。


 漢字表記を探す時の参考になるかと思う。否定的な意味の漢字は使われない。


 それから、植物の名前がつけられていることも多く見受けられる。


 菖蒲あやめ

 あざみ

 くず

 鏤美ざくろ


 ここもちなみに、全員男の子である。


 こんなこともある。


 『さくら』という男の子がいる。しかし、学校には同じ呼び名で、女の子もいる。腕力に差がないことも関係しているが、固定概念がないのである。


 あくまでも、性別ではなく個人を重視するため、男の子でも可愛い名前であったり、女の子でもかっこいい名前の子はたくさんいる。


 ちなみに、さくら→策羅である。


 私たち人間と同じで、神様の名前にも流行りやその時代のスタイルがある。今紹介した子供の名前は最近のものである。大人の神様とはかなり違っている感じを受けるのではないだろうか。


 ということで、先入観はできるだけ捨て、固有名詞を聞き取れるようにしよう。そこには親の子供に対する愛情や、神様の好みが存在する。視野が広くなることは間違いないだろう。


 それでは次は、守護神の資格という、少々聞きなれない話をしよう。

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