第10話 私と目を合わせない—パパは浮気している?

パパの今日の予定は同僚と飲み会と聞いていたけど、8時前には帰ってきた。私は帰りが遅いと思って先にお風呂に入って丁度上って着替えたところだった。


「ただいま」


「おかえりなさい。夕食はパスで良かったですね」


「同僚とビヤホールで済ませた」


「飲んだのに早かったね」


「この前の失敗があるから早めに切り上げたんだ」


玄関に迎えに出た時から、パパはなぜか私と目を合わせない。何かを隠そうとしている? うしろめたいことでもあるの?


ひょっとすると、飲み会の相手は女性? カバンを持って後ろを歩くといつもとは違うような匂いがするので、鎌をかけてみる。私は匂いには結構敏感な方だ。


「パパ、同僚は嘘でしょ。女の人の匂いがする。女性の同僚?」


「ええ!」


驚いているので、図星かな?


「洗濯しているから分かるの」


「そんな匂いする?」


困った顔をしている。


「好きな人がいるなら、はっきり言って」


畳みかけて聞いてみる。パパがおどおどしている。ますます怪しい。


「本当に今日は男性の同僚と飲んでいたんだ。好きな女性や付き合っている女性なんかいない。し・し・しいていえば、久恵ちゃんだよ」


「本当?」


「誓って」


真顔になっている。これは信用してもいいかな?


「私、マンションでは妻ということになっているのでお忘れなく。浮気は絶対にダメ!」


私が続けさまに問い詰めるので、パパはすごく困った顔をしていたが、好きな女性は私と言ってくれたことが嬉しかった。そして、浮気は絶対ダメと言ったら真顔になっていたけど嬉しそうだった。


でも、何かいつもと違う。お酒を飲んでいるからか、浮き浮きしているように見えるんだけど。なんていうか顔が緩んで満ち足りた感じ? お酒を飲んで、憂さ晴らしをしたから?


それから、パパは自分の部屋でスーツを脱いで、急いでお風呂に入った。怪しいと言われた匂いを消すため? まあいいかな、好きな女性は私と言ってくれたからと部屋に戻った。


パパは女の人をほしくならないのかしら。ソープランドへでも行っている? あの真面目なパパがありえない。


そういえば、2週間ほど前に夜中にトイレに起きたら、パパの部屋からうめき声が聞こえたので、パパに何かあったのかなと、ノックして大丈夫と聞いたら、返事がなかった。


心配なのでドアを開けると暗がりの中でテレビがついていたけど、真っ黒なビデオの画面だった。パパは布団をかぶって寝ていた。「呻き声がしていたので大丈夫?」と聞いたけど「大丈夫だから」と言っていた。


あのときHビデオでも見ていたのかもしれない。気になるから、今度、パパのいない時にこっそり探してみよう。


◆ ◆ ◆

次の日、夕食の準備が終わったので、ソファーで一休みする。パパが帰るのは7時前後で、まだ時間があるので、こっそりパパの部屋を探検することにした。


見られたくないものを隠す時のことを考えるとありそうな場所は大体想像がつく。プラスチックケースの中は工具だった。本棚の引出しの奥には貯金通帳と印鑑があった。クローゼットの棚の奥の方にプラスチックのケースが並んでいるのを発見した。


DVDのケースが30枚くらい、背中を向けてタイトルが見えないようにきちんと並べてある。ケースの写真を見るととても見ていられない恥ずかしいものばかり。でもどういう訳か、パパをいやらしいとは思わなかった。それよりやっぱりパパも男なのねと安心した。


私に見つからないように隠したんだ。知らないふりをしておこう。それより、時間を見つけてこっそり見てみたい。

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