第1-3話

会社に着き、

自分の就く"管理・事務"の扉を開けると僕の席には見知らぬ女性が座っていた。

「部長、この女性はどなたですか。」

部屋の奥に座る部長に話しかける。

部長は僕に睨みを利かせてから隣の会議室に入っていった。

僕も部長に続き会議室に入る。

「新人の方ですか。にしても僕の席に座らせますか。」

僕は話しながら部長の向かいの席に座る。


「荒木さん、見覚えがないのですか。私はあの女性を知りませんよ。」


「じゃああの女性は誰なんですか。」


「私が部屋に入ってきた時にはもういました。女性に尋ねると荒木さんにここにいるように言われたと。」


「僕はあの女性を知りませんよ。警察に届けた方がいいんじゃないですか。」


「そうですか。荒木さんがどっかの女をそういう目的で入れたのかと思いました。しかし、今仕事を一つ頼んでいるんですよ。そしたらとても仕事が速くてね。私は丁度、人も足りなかったので新しい正社員として迎え入れてもいいと思っているのですが。」


「部長、目上の方にこういった言い方は不適切だと存じますがそれは正気ですか。僕はあの女性を知りません。ということは不法侵入ですよ。いつ、何をしでかすか分かったもんじゃありません。」


「それはもちろん承知の上ですよ。」


「オートロックのこの部屋に入って来たのは見過ごすと?」


「入って出られなくなっているような女性ですしね。」

そう言って部長は笑った。

「しかし、このまま雇用するのもさすがに私も心配ですので一つ頼みがあるのですが。」


「なんですか。」


「あの女性と話して来てほしいです。今日はもう会社を出ていいですからどんな方か見極めて来て下さい。それで良い方だと思ったら雇用の話を持ちかけてまた明日、あの女性と会社に来て下さい。」


「そんなことしなくてもきちんと面接をすればいいんじゃないですか。」


「犯罪者を見極める目は私にはありませんから。」

そう言ってまた部長は笑った。


「分かりました。では、今日はこれで失礼します。お疲れ様でした。」


そう言って、僕は会議室を出た。

僕の席には女性が座ってなにやら計算をしたり、パソコンを叩いたりしていた。

席に近づき、周りの人に聞かれないよう小声で話しかける。

「こんにちは。仕事していただきありがとうございます。もういいですから荷物をまとめてついて来てくれますか。」

女の人は僕の顔を見た。

なかなかの美人な女性だ。

「はい、分かりました。」

その女の人はデスク下に置いていたカバンを持って立ち上がる。

「では。」

僕は女の人を部屋の出口へと導いた。

首に垂らしたカードキーをかざして扉を開ける。

「お疲れ様です。」

そう言って僕は部屋を出た。

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