描写(New花金Day)(※注意)
(※この話は、あまりLGBT(LGBTQA+)に詳しくない人間が書いています。中には差別用語も混じっています。
作家だって知っていることもあれば知らないこともある、という前提のもと、真に受けないようご注意ください)
「んー……? どうとも思わん」
パフェ美味そう。
そう言って、俺の女友達はメニューから目を離さない。
その興味のなさに、俺は拍子抜けする。
「私の善悪はお相手の同意をちゃんととってるかだから。ホモかヘテロかはどうでもいい」
「今『ホモ』って言葉、差別用語なんだけど……」
「え、そうなの?」
それには驚いたのか、女友達は一旦メニューから顔を上げる。
「『ホモ・サピエンス』って言うのに?」
「それは関係ないと思うよ」
……多分。
ふーん、と女友達はまた興味なさげにメニューに視線を移しながら話す。
「こないだ読んだ漫画では、諸説あれど『ホモ』は男同士で、男でも女でも同性同士の中で違う性を求めるのが『ゲイ』だって、ヒロインが説明していたけどな」
「どんな漫画なのそれ!?」
「なんか変なニワトリが登場する漫画……」
ヤバい情報量が多すぎて死にそう。
「ホモが差別用語なのは分かったけどさ……そもそも『ゲイ』と『レズ』で分ける意味ってなんだろう」
日本語なら『同性愛』でくくれるじゃん? と、女友達が素朴な疑問を口にする。
「男と女じゃ、向ける感情が違うからじゃない?」
「その説だと男→女とか、女→男に向ける恋愛感情もだし、『バイ』だって男か女かで違うってことになるじゃん」
っていうか、と女友達はそこで眉を顰める。
「常日頃思ってたんだけど、『LGBT』に突然『トランスジェンダー』が入ってくるの何で。何で急に相手の性別じゃなくて自分の性別が入ってくるんだ」
「身体が男で心が女でも女が好きな可能性はあるからじゃない……?」
その場合は『レズビアン』だと言い切りにくいだろうし。
いやいや、と女友達が否定する。
「別にLGBTで無理にまとめなくても、Tは独立できるって。QとかXとかのアルファベットに声掛けてユニット組めるって」
「そんな事務所から独立した芸能人みたいな」
「LGをセットにしてTが別グループ作ったら、『アセクシャル(恋愛・性的感情を持たない人)』のAとか他のメンバーも加入出来るじゃん」
「どうでもいいって言う割には、色々知ってるなあ?」
「大学のジェンダー論で習った程度のことだよ、私が知ってるの。現に差別用語って知らなかったし。『オカマ』『オナベ』とかは聞いてるこっちも嫌な気分になるなって思って使わなかったけど」
オネエは今アウトなんだろうか。そう言いながら、運ばれたフライドポテトをつまんで振る女友達。塩っぱくてあつあつのフライドポテトと甘くて冷たいパフェを行ったり来たりして無限に食べるつもりらしい。スイーツビュッフェでよくやる奴だ……。
っていうか、QとかXとか何だっけ。
そう尋ねると、女友達が答えた。
「Qはクエスチョン、つまり『自分がどんな性別かわからない』じゃなかったっけ?」
「んじゃー、Xは?」
「Xはー……」
そこでピタ、と女友達が口を閉じた。
暫くの黙考の末に、出た答えは。
「…………連立方程式?」
「無理して答え出さなくても」
このままじゃ埒が明かないので、ネットで調べることにした。
「最初からこうすれば良かったんじゃない?」
俺の言葉に、そうね、と女友達。
「三人いればなんとやらって言うけど、水に水を足しても水にしかならない……」
「文殊の知恵にするには一人足りないしね」
という訳で、調べた結果。
『Q』は「自分の性別・好きになる相手の性別がわからない」人。
『X』は、「自分の性自認が男にも女にも当てはまらない(大きくわけて中性・両性・無性・不定性)」人。
「Qは好きになる相手も含むんだ。便利ー」
「便利なんだ」
「いやぶっちゃけ、二十数年生きた程度で自分がヘテロだのその他だの言える人の方がすごくない?」
「それは……好きになった人の経験則じゃないの?」
「いやいや、別のタイプの人を好きになるように、別の性の人を好きになる可能性もあるかもじゃん。私の可能性は何時だって無限大だよ」
私ヘテロって言いきれる自信ないもん、と女友達が言う。
「最推しだって一回一回連載を重ねる度に変わるのに」
「それリアルで当てはめたら浮気にならない?」
「だって、死んだ時辛いもん……フラフラしてないとやってけない……」
「あー、好きになった瞬間に死ぬもんな、最近」
何で推しキャラすぐに死んでしまうん?
で、LGが分けられた理由と、LGBとTが一緒の理由。
これがちょっと、重たかった。
「そっか……バイ・セクシャルとトランスジェンダーは、ゲイとレズビアンに差別されてたんだ……」
同性愛者にとって、バイ・セクシャルとトランスジェンダーはコウモリ扱いだったってことなんだろうか。
同じようにレズビアンが出来たのは、女性蔑視が強かった時代、男性を排除することで女性のアイデンティティを確立しようとした過去があるかららしい。
「マイノリティの人が、マイノリティを排除するってこともあるんだな」
いや、グループを確立するために排他的になるのは、マイノリティもマジョリティも関係ないか。
線を引くってことは、排他する条件を作るってことだもんな。
「自分は〇〇である」と表現することは、「他者とは違う」という排他的な感情が常にあるのかもしれない。
「その差別を撤回するって意味もあって、一緒にまとめられたんかね。マイノリティ同士組まないとマジョリティと対等に交渉が出来ないからってのもあるだろうけど」
色々理由があるんだねー、と女友達が言う。
「その時その時のイメージを払拭させるために、言葉の意味とかが変わっていくんだろうね」
「そういう描写がある漫画とか小説書いてる人たちって、ちょっと時間が経ったら書いてたものが差別的用語になってたりするんだろうなあ」
「読み取るこちら側も真に受けないで、ちゃんと更新しないといけないねえ」
『レズ』は差別用語なんだな、調べてよかった、と続ける彼女が、ふと我に返った。
「……いや、何でこの話になったんだっけ」
「……何でだっけ」
ヤバい。
最初の会話の出発点忘れた。
突然の英語単語のお時間
【draw】(線を)引く、(ペン・鉛筆で)描く
ーーーー
ほぼお題が関係なくてごめんなさい。
オチもありません。
『レズビアン』のことを『レズ』と呼ぶのは差別用語って聞いたことあるようなないような……。
込められたニュアンスによって差別用語とひっかかる可能性もあるのでご注意をば。
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