集会所
「千治は今、集会所の方に泊まり込んでます。何でも、発掘品を市長らと一緒に調べてるとか」
千治の妻である
集会所へは、村のすべての家から屋外に出ずに行けるようになっている。また、ほとんどの家は、玄関から靴を脱ぐことなく裏口へと通り抜けられる造りになっており、千治の家の裏口に回らせてもらって、集会所への廊下を歩いた。家々を繋ぐ廊下は、蒸気を送る配管や上下水道の配管、電線を通す為の通路も兼ねている。蒸気用の配管から僅かに立ち上る熱で温められ、気温はだいたい氷点下三度前後と、外よりは十度以上暖かい。
この環境に慣れた
集会所に着いた二人は、ドアをどんどんと叩いた。
すると、僅かに開かれたドアから
「入れ」
「初めまして。私は、
『初めまして』ではないのにこれはどうしたことかと面食らっていると、千治が説明してくれた。
「こいつは、起動するたびに記憶がリセットされるようだ。そうならないようにするには<ユーザー登録>なるものが必要らしい」
そう言われて、
「今日、こんなものを見付けた…」
と言いつつ彼女がバックパックから取り出したものは、棚に置かれていた<あさぎシリーズ・ユーザーズマニュアル>であった。
それを見た瞬間、千治の目が鋭くなる。
「もしや、それが鍵になるかもしれない」
メイトに対して懐疑的だった
「なるほどこれが」
「メイトのマニュアルか…」
そんな人間達の様子に、<あさぎ>が口を開いた。
「そちらは私ども<あさぎシリーズ>のマニュアルでございます。ユーザーコードを書き留めておく欄がございますので、そちらにユーザーコードと行政への登録用コードが記されている可能性がございます」
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