第26話 小さな少女と語りたい②

「はぁ、はぁ、はぁ、んっ!」


「くっ、そろそろぞ、杏奈アンナ。覚悟はいいか?」


「はぁ、はぁ、え、ええよ………来て、カケヤン!」


 あの後、屋敷に戻った俺と杏奈アンナは今、激しく呼吸を乱しながら、エアホッケーにいそしんでいた。


「くらえっ!!」


 俺のはじいたプラスチック製のパックが一直線に杏奈アンナのゴールに向かって進んでゆく。


「甘いわっ!!」


 その直前で杏奈アンナが横凪ぎにパックを弾き返す。

 力強く弾かれたパックは競技台の外枠に高速で「カンッ!カンッ!」と当たって反射を繰り返し、左右に激しく跳ね返りながら俺のガードをすり抜けて、俺側のゴールへ吸い込まれた。


「っしゃあっ!!」


「ああっ、くそっ!!」


 完全に入ったと思った次の瞬間、逆に自分のゴールに入れられていた。

 エアホッケーなんて初めてやったが、やる前は「これくらい簡単だろう」と思っていたのだが意外と奥が深い。


「カケヤンは直線的に攻め過ぎや。もっとサイドも絡めて攻めてかな。女の子かて、いきなりズドン!やなくて………」


「あー、下ネタはいい!」


 あの後、泉から屋敷に戻った俺達は、売店と大浴場の中間にあるゲームコーナーに来ていた。

 そんな場所もある事は知っていたが、ここまで本格的ゲームセンターみたいな充実度だとは思わなかった。

 正直、あまり見て回る場所の無いこの『兎毬トマリ王国』で、杏奈アンナと一日どうやって過ごそうかと思っていたので助かったかもしれない。

 明日からの紗羽サワ達との時も、困ったらここへ来れば少しは時間が潰せるかもしれない。


「はーっ、運動したら汗かいたな。ちょっとひとっ風呂浴びてこよか?」


「ん?あぁ、そうだな。じゃあ………」


 俺は壁に掛けられている時計を見る。


「ほなら、一時間後にまた大浴場前で待ち合わせでええんちゃうか」


「わかった」


「んじゃ、ウチは部屋から着替え持ってくるから、また後でな!」


「ああ」


 そう言って杏奈アンナは小走りに去っていった。

 俺も一旦自室から着替えを取ってきて再び大浴場の前まで戻って来た。

 そこに杏奈アンナの姿は無かったが、まだ部屋なのか、それとももう先に女湯の方に入ったのかはわからないが、一時間後に大浴場前でと約束したのだから俺も男湯の方へ入っていった。




 相変わらず貸し切り状態の男湯はだだっ広く、足を伸ばして湯船に浸かると何だか贅沢な気分になる。

 ここに来た当初こそ長風呂を満喫したものだが、さすがに毎日利用するようになると自宅の風呂のように体だけ洗って少し湯船に浸かって終わりという事も珍しくなかった。

 だが今日は一時間後という約束をしている事だし、久々にのんびりしようか。

 そんな事を考えていたら………


「カ~ケヤン♡お背中お流ししましょうか?」


「え?………うわあっ!?」


 いつの間にか俺の背後に杏奈アンナが立っていた。

 タオルで前を隠してはいるものの、それ以外は一糸纏いっしまとわぬ全裸。

 実は水着を着てくれているのかと期待をしたが、タオルで隠れていない肌の部分を見る限り、おそらく水着は着用していない。

 髪は束ねてタオルですっぽりと隠れているが、隠すべきはそっちじゃないだろ!


「おまっ、お前っ!何でこっちに!?しかも、はだっ、裸でっ!!」


「お風呂に裸は当たり前やん。どうせウチら二人しかおらへんのやし、ええやろ?それにカケヤンもロリコンやないんなら、な?」


「し、しかしな………」


「さ、さすがにウチもずっとこのままなんは恥ずかしいわ。隣、入ってええか?」


「あ、ああ………」


 目を反らしている俺の背後から「チャプ」というお湯の音が聞こえ、お湯が揺れるのを感じる。


「はぁ~、気持ちええわぁ………」


「………………」


「カケヤン?いつまでそっち向いてんの?」


「み、見れるわけ無いだろっ!!」


「その反応………どうやら童貞どうていいうんはホンマやったんやな」


「お前、まさかそれを確認するためにこんな事したのか!?」


「それもあるけど………ってか、ええ加減こっち向けやっ!!」


 杏奈アンナは俺の肩をがっ!と掴み、強引に自分のほうを振り向かせる。

 無理矢理ぐりんと体を半回転させられた俺の眼前に飛び込んできたのは、ぽつんと小さなピンク色の二つの突起だった。

 その二つのピンク色の周囲は真っ白な肌が広がり、とても綺麗だった。

 唯一の救いは、はお湯の中に浸かってくれている事ではあるが、透明度の高いお湯のせいで気休め程度ではあるが。


「なんや、ウチのつるぺたな体でも赤くなるんやな」


「あ、当たり前だろ。お前だって一応女の子なんだから………って言うか、お前は恥ずかしくないのかよ」


「恥ずかしいに決まってるやん」


 ずっと顔の正面にあるピンクの突起を見続けるわけにもいかず、かと言って視線を下に向けるわけにもいかず、上を見上げる。

 すると俺を見下ろす杏奈アンナの顔は真っ赤に紅潮していた。


「でもこのお互い『恥ずかしい』が、男女の初めの一歩なんちゃうかな」


 いつの間にか、俺の両肩の掴んでいた杏奈アンナの両手は俺の後頭部にまわされていて、俺の頭をホールドして自分の胸に抱き寄せる。

 必然的に俺の顔は杏奈アンナの控えめな胸にうずめられる格好となった。


「む、むぐっ………」


 そしてさらに必然的に、それだけ密着している為、杏奈アンナのお腹が俺の胸に当たり、俺の腰の上を跨ぐ形で膝立ちしている。

 その数センチ下には俺の『分身』が天を向いて成長しつつあった。

 杏奈アンナわずかでも腰を下に降ろすだけでも杏奈アンナの『入口』に接触しそうだったが、このままの状態が続いたとしても俺の『分身』のほうから『入口』をノックしてしまう事になる。

 このままではマズイ!!


「むが!むごっ!」


「あん♡カケヤン、くすぐったい♡」


 今の杏奈アンナの甘ったるい声のせいで『分身』の成長が一気に加速する。

 接触の時までもう一刻の猶予も無い。

 もうダメか!と思った時、杏奈アンナはぐっと俺に密着し、そして一気に体をドスン!と下に降ろした。


「~~~~~~~っ!!」


「あっ♡」


 あまりに密着させ過ぎたおかげか、『分身』は『入口』をわずかにれ、杏奈アンナの『入口』を守る柔らかい谷間に挟まれる形でのがれる事になった。

 つまり状況としては、杏奈アンナは俺の『分身』の付け根と腹部の間の隙間に着地して座っている状態だ。

 なんとか一番の危機はまぬがれたわけだが、俺にとってはあまりにも刺激が強すぎた。


「あはは………残念♡さすがにウチもこんな形で処女喪失はしたくないわ。どうせならロマンチックにベッドの上で………ん?カケヤン、どないしたん?プルプルして………」


 先ほどのドスン!の時点で俺のダムは既に決壊していた。


「ん?………………あ」


 杏奈アンナが後ろを振り返ると、そこには俺の『我慢の結晶』がふわふわと浮かんでいた。


「あー………ごめん。ちょっとからかい過ぎたわ………」


 普段は屋敷の使用人が毎日決まった時間に清掃とメンテナンスをしている大浴場だが、今日は俺と杏奈アンナが自主的に清掃をさせてもらう事になったのだった。

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