第18話 理想のために練習したい
4月5日、午前10時。
俺が
その場所は
そこに小さな建物が完成していた。
「おお………本当にできてる」
俺がこの『
元々の俺の夢でもあるし、どうせここは
とは言え、俺としては拠点となる場所さえどこかに提供してもらえれば良かったのだが、俺が警察官をやると言ったら
そう、俺の目の前には立派な『交番』が出来上がっていた。
「どう?希望通りかしら?」
「いや、まぁ。まさか本当に作っちまうとはな」
「いいのよ。確かに『警察官』という職業も必要だわ。
「ああ、わかった」
俺は交番の中に入り、奥の休憩室に置いてあるそれを手に取った。
それは『制服』だ。
これも別に俺から頼んだわけでは無いが、
動きやすさとか機能性とかも大事だが、俺としてはどうしても譲れないポイントがあった。
それは『デザイン』だ。
俺からリクエストした点は『日本の警察官の制服に似ていないデザインにしてくれ』だった。
何故こんなリクエストをしたのかと言うと、俺は本物の警察官ではないからだ。
本物の警察官に憧れるからこそ、ここで本物に近い制服を着るわけにはいかないという、俺の意地みたいなものだった。
「おお………赤を基調にしたデザインか。これなら確かに日本の警察官っぽくは無いな」
試しに着てみる。
心配してはいなかったが、サイズもピッタリだ。
「うん、なかなか似合ってるわよ」
「そ、そうか?」
「ええやんか~!ちょっとコスプレっぽいけどな」
「
「お姉さん、なんだかドキドキしてきたわ♡」
誉め言葉に聞こえないものも混じっているが、概ね好評のようではある。
「それじゃ
「どうした?」
言いかけた
「
「本当にお前の頭はどうなってんだ」
まず真っ先に
「まぁとにかく!我が国の警察官第一号として頑張って頂戴!!」
「あ、それなんだが、『警察官』以外の呼び方は何か無いかな。やる事は警察官と同じでも、やっぱり『警察官』という名称を使う事に抵抗があるんだ」
「ええ~?
「それじゃ制服のデザインをわざわざ警察官っぽく見えないようにしてもらった意味が無いだろ」
「でしたら、『警備員』でいいんじゃないでしょうか?」
確かに警察官じゃなければ、近いところでは警備員が一番無難な気はする。
「どっちにしても今のこの国で守らなアカンもんなんかほとんど無いんやし、いっそのこと『自宅警備員』でええんやないか?」
「それは全く意味が変わってくるだろうが!」
名称については
とにかく、俺のここでの仕事は決まった。
こうなったらもう割り切って、将来のための練習だと考えよう。
本当なら警察官採用試験を受けて夢への第一歩を歩み始めるはずだった俺の春からの新生活は、わけのわからない金持ちの道楽に付き合わされる形でスタートを切る事となったのだった。
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