下校

 安永拳と三日月モモは一緒に駅へ向かっていた。


「ヤスケン、今日部活は?」

「昨日練習試合があったから、今日は休みなんだ。で、モモっちは?」

「あたしは、今日用事があって部活は休むんだ……」

「ふーん、そうなんだ」


 用事があるのは嘘だ。モモは部活での冷たい雰囲気に耐えられず、サボってしまった。二人が学校から出ようとすると、校門の前に女子高生が一人立っていた。しかも、手には大きなペットボトルを持って。


「すみません、入学式の会場はどこですか?」


 その女子高生は安永に聞いてきた。


「いや、入学式は明日だよ。キミ、新入生?」

「え、明日ですか?あ、あたし間違えちゃった。教えてくれてありがとうございます!」


 新入生はペットボトルの中にある清涼飲料水を一口含むと、


「先輩、けっこうイケメンですね」


 といい、走り去っていった。その言葉に照れる安永を見て、モモは思わず安永のお尻をつねった。


「い、痛いって、モモっち!」

「なに照れちゃってんの、もう!」

「照れてないって」


 つねられてもなお顔が緩んでいる安永を見たモモは


「じゃあね、ヤスケン!」


 といい、頬を膨らませながら足早に駅に向かっていった。


「なんで、怒ってるんだよ」


 不思議そうにモモの後姿をみている安永の肩を誰かがたたいた。


「だから言っただろ、あいつは暴力女だから気をつけろって」

「あ、リーダー。今度から怒らせないように気をつけるよ。でも、なんで怒ったのかな?」

「女心は複雑っていうから、あんまり考えないほうがいいよ。で、ヤスケンこれから昼飯食いに行かない?」

「いいね。じゃ『すこやか』に行こうよ。オレ、あそこの『カブトハンバーグ』大好きなんだ」 

「よし、じゃ『すこやか』に行こうか」

「おう」


 しげると安永、そしてクラスメイトの数名は『すこやか』に向かった。

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