3-Dで鉢合わせ

 体育館での始業式を終え、生徒たちは新しいクラスの教室へ向かった。ここはとある教室、ドアには「3―D」の文字が記してある。

 生徒たちが歓談している中、安永拳は一人席に座り、あたりを見回していた。


「どこにいるかな?」


 安永はどうやら誰かを探しているようだ。すると、


「おはよ、安永くん。本当に一緒のクラスになっちゃったね」

「あ、三日月さんおはよう。本当になっちゃったね。一年間よろしく」

「こちらこそ、よろしくね」


 安永に声をかけたのは三日月モモだった。二人は一緒のクラスになれたことを喜んでいた。しばらく二人で話していると、ある男子生徒が会話に割り込んだ。


「ちょっと、キミ。その娘は暴力女だから気をつけな」

「暴力女ってどういうことよ!定期を拾ってやった恩を忘れたの、リーダー」

「それでも、返すときに殴ることは無いだろう、木琴さん」

「ちょっと、『木琴』言わないでよ!三日月だってこの前教えたでしょ」


「え、三日月さんって『三日月木琴』って名前なの?」

「違うのよ、安永くん。『木琴』っていうのはあだ名よ。この人と玉木ってやつが勝手に呼んでるの」

「で、こちらが『リーダー』くん。めずらしい名前だね」

「ちょっと、ちょっと、ちょっと。『リーダー』なんて名前の日本人いるわけないだろ!『リーダー』もあだ名だよ、あだ名。俺の名前は『城ヶ崎しげる』だ、よろしくな安永くん」


「よろしく、城ヶ崎くん。でも、うらやましいな、二人ともあだ名があって」

「あだ名って、『木琴』は二人しか言ってないし」

「そうか、安永くんはあだ名ないのか?」

「ああ、転校してまだ三ヶ月だし、今までも苗字でしか呼ばれたこと無いし」


「よし、俺がつけてあげよう。ちなみにフルネームは?」

「安永拳」

「安永拳だね。よしっ決まった!今日からキミは『ヤスケン』だ。よろしくな、ヤスケン」

「『ヤスケン』か、いいあだ名だね、安永くん」

「うん、ありがとう二人とも。じゃ改めてよろしくリーダー、木琴さん」

「ちょっと、あたしは『木琴』じゃないよ!せめて『モモちゃん』って呼んでよ、ヤスケン」

「わかったよ、よろしくね『モモっち』」

「『モモっち』って……ま、いっか」

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