モモと安永のホワイトデー

 一方その頃、三日月モモは駅のプラットホームで玉木からもらったクッキーをほおばりながら、帰りの電車を待っていた。


「まずかったな。まさか間違えるとは……」


 モモはヴァレンタインデーのミスに後悔していた。すると、誰かがモモの肩をたたいた。


「や、三日月さん」

「ああ、安永くん」


 安永はモモのクッキーに目を向けた。


「あいかわらず、いい食いっぷりだね」

「『あいかわらず』っていつもあたしが食べてるみたいじゃない。失礼しちゃう」

「ごめん、ごめん」


 電車がプラットホームに着き、二人は電車に乗り込んだ。


「もうすぐ新学期だね」

「そうだね。もう三年生か、早いね」

「一緒のクラスになれるといいね、三日月さん」

「え?一緒のクラス?」


 モモは思わずにやけてしまった。


「どうしたの、うれしそうな顔して」

「あ、え……なんでもないよ」


 モモはあわててごまかした。


「そうだね、一緒になれるといいね、安永くん」


 いくつかの駅を過ぎ、


「じゃ、俺ここで降りるから。あ、クッキーばかり食べてると喉渇くから、これあげるよ」

「ありがとう、じゃね」


 安永が電車を降りた後、モモは安永からもらった飲みかけのペットボトルを口につけ、お茶を口に含んだ。


「一緒のクラスか……」


 一緒のクラスになることを妄想するモモ。このとき起きた重大な出来事にモモは気づいていなかった。

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