第66話 ごめんねとありがとう。
キスの名残を受けてか俺達はいつの間にか手を繋ぎしばらく並んでベンチに座っていた。
「美樹。キスしてよかったの? まだ答えを出していない俺になんて」
「はい、私がしたかったからしただけですから。蒼汰さんは気にしなくて良いんですよ」
美樹はそう言って俺に安心させようとしてなのか優しい微笑みをくれた。
「千夏ちゃんのこと気にしているんですか? 」
やはりふたりの中には必ず千夏が居るというようなそんな感じで美樹がそう尋ねてきた。
「気にならないと言ったら嘘になるかな。ふたりを見て答えを出すと言いながら結果を出す前に美樹とキスしちゃったわけだから。千夏にはきちんと話をしないといけないなと思ってる。そこで嫌われたなら仕方ない……かな」
俺は素直に美樹の問いに答えた。
「蒼汰さんからしたわけじゃないんですから。寝込みそして無理矢理と合計2回、両方とも私からしたんですよ。なので蒼汰さんが悪いわけではないですから。それと私も千夏ちゃんにはキスに関することはきちんと話すつもりです。ただ千夏ちゃんが蒼汰さんを嫌うことはないと思いますよ。そんな簡単に嫌うことができるなら蒼汰さんのことを気になってるなんてきっと口にはしてないはずです。千夏ちゃんはそういう人ですから」
千夏と付き合いの長い美樹だからそう言えるのかな? と俺は美樹の話を聞いてそう思えてしまった。
その後亜美姉ちゃんと圭佑と合流し、遊園地内の飲食店で食事をする。ふたりきりにしたからか圭佑は亜美姉ちゃんに引っ張り回されており疲れ切っていて食事もあまり喉を通らなく調子の悪い俺と同じく軽い食事で済ませるようだ。というかがっつり食べたのは亜美姉ちゃんだけだった。どんだけ元気なんだよ亜美姉ちゃん。
食事をした後は亜美姉ちゃんも静かになりしばらくのんびりと食事をした席で時を過ごした。まあ、亜美姉ちゃんが静かなのは食べすぎてお腹いっぱい動くのもしんどいって言うだけなんだけどね。
「蒼汰、ちょっとついてきてくれないか? 」
「ん? どこに? 」
「ちょっとインフォメーションセンターに用事があってな。ちょっと付き合ってくれ」
なにか用事があるらしい圭佑。まあついていっても亜美姉ちゃんはこんな状態だし問題ないかと考えた。なので美樹の方を見てみると「行ってきていいですよ、亜美さんは見てますから」と察しの良い美樹はそう言ってくれた。
「ああ、わかったよ。それじゃ美樹、亜美姉さんのことすこしだけ見ててもらっていいかな? まあこんな状態だし問題ないと思うけど」
「こんな状態って何よ。ちょっと食べすぎただけでしょ? 」
亜美姉ちゃんはほっぺを膨らませぶーぶーと文句を言った。
「はい、亜美さんは見てますから蒼汰さん、斎藤さんも気をつけて」
美樹からそう返事をもらうと俺は亜美姉ちゃんの文句はスルーして圭佑と共に少し席を外すのだった。
斎藤くんと蒼汰さんが席を外してしばらくした後に亜美さんが私、美樹に話をかけてこられました。
「ごめんね。圭佑に頼んで蒼汰くんを連れて行ってもらったの。美樹さんにちょっと話があったの」
私は何を言われるのかわからないので思わず身構えてしまいました。
「美樹さんから妹さん、美優さんに伝えてもらいたいことがあったから。美樹さんは美優さんの好きな人は知ってる? 」
亜美さんから出た話は美優の話でした。ふたりに関係があったことを知らない私は急な話で驚いてしいます。ですがなんとか返事を返しました。
「はい。斎藤さんのことが好きだったと聞いてます。斎藤さんが亜美さんと付き合い始めたと知って泣いていたことも知っていますから」
あの時泣いていた事情も美優から簡単には聞いていました。ですが、亜美さんが斎藤さんと付き合っているというのに美優に何の用があるのでしょう? そう考えながら聞いていると
「美優さんのお陰で圭佑と付き合うことができました。あなたの言葉があったから圭佑に告白できました。本当にありがとう。けれどそんなあなたから奪ってしまってごめんなさいって」
出てきたのは美優に対してのお礼と謝罪でした。私にはいろいろと言う権利はないけれど、その言葉に私はこう告げました。
「わかりました。亜美さんからの話は美優が聞き入れる場合という条件が付きますが伝えておきますね。あまり美優に斎藤さん関連の話はしたくないのですが」
思わず本音が出てしまいましたが了承いたしました。私が無碍に断る理由がありません……ただし、条件をつけさせていただきました。だって美優が聞きたくないと言えば話したくありませんから。
「うん、それでお願いします。会いに行っても会えないかなと思ったから……」
今日初めて真剣に話す亜美さんを見て美優に対して複雑な感情を持っていることがよくわかり、ふざけるだけの人ではないんですねと悪いながらもそんな事を私は思うのでした。
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