第60話 勉強会のお礼を。
今週は水曜の昼食に新見が初参加したわけだけれど、新見がよく見知った人が美優くらいなためか少しぎこちない昼食になってしまった。また、新見は千夏のことを知りたいためかできるかぎり話しかけようとしていたけれど、千夏だけに偏ってしまうとみんなの雰囲気を壊しかけないとわかっていたのかみんなにも話しかけようと努力していた。
ちゃんと周りを見て行動している新見を見てこれなら大丈夫かなと俺は安堵する。
なお、千夏は積極的にではないけれど新見から話しかけられれば話す感じで過ごしていた。なぜか話し終わるたびに俺のほうをじろじろと見ていたが。
それとは別に俺と美樹が付き合っているという噂で一応クラスの人には話をしたけれど他のクラスや他の学年の人にはできてない。そのため、休み時間に見に来てはぶつぶつとなにか言いながら嫉妬の目を向けてくる男子生徒が多いこと多いこと。たまに教室にまで入ってきて俺に問い詰める人もいたりする。まあ素直に「付き合ってますよ? 」と返せば、ちょっとした嫌味を言ったり、何も言わずうなだれて帰っていっていく人が殆どでそこまで困る人が居なかったのは助かった。尋ねに来た人の中に佐伯さんのような人が居たらと思うと……ね。
テストは木曜からはじまり翌週の火曜まであった。俺は家で毎日勉強をしてきたし、美樹と千夏とした勉強会も1日だけだったがやはりわからないところを尋ねられたことは大きかったようでその後の勉強もひとりにも関わらずスムーズに出来たと思っている。
なので無事にテストもそう困ること無く乗り越えることが出来た。圭佑は「終わった……」なんて言ってうなだれていたけれど。
テスト終了後の放課後、いつものように美樹と千夏、今日は美優も一緒に帰ることになった。
「蒼汰さんテストの方はどうでしたか? 」
そう美樹が俺に尋ねてきた。
「お陰で無事に乗り越えられたよ。勉強会をして美樹たちに教わった分いつもよりスムーズに家でも勉強できたしね」
俺は勉強会に効果があったことを話した。
「それだったら開いた甲斐があるな」
「はい、これからもまた4人で勉強会を続けていけたら良いですね」
美樹と千夏はそう言ってくれた。ただ、
「ふたりはどうだった? 俺に教えていたせいでテストが悪かったとなっちゃ困るよ」
俺が心配してそう言うと
「たった1日ですよ? 全く問題ありません。もっとたくさんしても問題ないです。いえもっとたくさんしたいです、いえ今度はもっとたくさんしましょう! 」
「はぁ、おちつけ美樹。まあたった1日だよ。影響が出るようなものじゃないから気にしなくていいよ。たしかに美樹の言うとおりもっと開いても問題ない」
ふたりはそう言ってくれた。ただ、美樹はちょっと暴走しそうになってしまったが。そんなふたりを美優は見ながら
「ふたりに対してそう気を使わなくてもいいわよ。そんなやわなふたりじゃないし。それに蒼汰くんが気にしてたら私なんて教われないじゃない。一日やそこらじゃないんだし」
美優のほうが教わる機会が多いのだろう、そんな事を言ってきた。
「でもやっぱり勉強を教わったからな。そうだ、ふたりに何かお礼でもしようか? 」
俺が一言そう言うと、美樹と千夏は目を輝かせて俺を見てきた。
「嬉しいですけど……お礼なんてそんな……」
「ああ、そんなこと気にしなくて良いんだよ。私達の仲じゃないか」
ふたりそう言ってくれるもののふたりの様子は待てを待つ犬のよう。何かな何かなと期待しているそんな様子に見えてしまう。そんなふたりを見て笑いそうになりながらも
「ふたりともなにか考えといて、できることならするから。美優はいいよな教わってないし」
そうみんなに告げると
「たしかにそうなんですけど……なにか仲間はずれみたいで悔しいそんな気分ですね」
美優は除け者にされたのが嫌なのかそんな事を言っていた。
さて、ふたりは何を要求してくるのかな。少し楽しみな俺であった。
なお、お礼についてはふたりが「せっかくの蒼汰くんからのお礼ですからゆっくりと考えさせて下さい」とのことでしばらく保留ということになったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます