第20話 初の共同作業?
校門に着くと、ふたりが先に待っていた。そんなふたりを学校帰りの生徒たちは誰を待っているのか気になるようでチラチラと眺めていた。
「お待たせしました」
そう言って、ふたりの元へと近づいていく。
「いや、そう待ってないぞ。」
「では、蒼汰さん行きますか? 」
会話を交わした後、商店街に携帯ショップがあったはずなので、そこに3人で向かうことにした。
向かう途中、結構な男の学生から声をかけられることが多かった。美樹先輩と遠藤先輩にね。遠藤先輩はあしらうような感じだけれど、美樹先輩は相手の言葉をしっかりと聞いてお断りしていたようだ。
「今日はいつもより多いな。」
遠藤先輩はそんな事を言う。というより、普段から日常的に声をかけられるのか? と驚いてしまう。
「スルーで良いんだが、どうしても美樹が捕まってしまう。美樹はどうもスルーができなくてね。相手の話をしっかり聞いてしまうんだよ。それで時間がかかるんだが。変な輩に捕まると危ないから無視しろと言うんだけどなかなか聞いてくれなくてね」
遠藤先輩は少し困った顔で言った。
「千夏ちゃんそう言わないで下さい。もしかするとなにかあるかもしれないじゃないですか? 落とし物をしただとか、この先危ないと教えてくださったりとか」
何この人、そんなことまで考えちゃうのか。天使か! と思っちゃう。
「でもなにかあったら危ないので気をつけてくださいね」
ちょっと心配なので俺は気をつけるように言っておく。
「うー。はい、わかりました……」
少し不満ながらも返事を返してくれた。
「山口くんの話ならすぐに返事できるんだね」
「もう、千夏ちゃんったら」
そう言って遠藤先輩がからかったことにちょっと頬を膨らまして文句を言うのだった。
携帯ショップに着いてスマホを選ぶ。よくよく考えればこれが初の共同作業かな。昼食は共同作業とは違うかなと思うし。さて、俺は美樹先輩にどんな物が欲しいか聞いてみるが
「よくわからないので、おすすめがあれば教えて下さい」
と言われてしまう。俺もそう詳しいわけではないのでどうしようか悩んでいると
「美樹は蒼汰くんとやり取りできればそれで良いのかな? 蒼汰くんと写真を撮ったりはしない? もし撮るならきれいな画像がいいよね? 」
と尋ねていた。
「一緒の写真……撮りたいです。綺麗が良いです」
と少し照れながら返事をしていた。
遠藤先輩もそこまで詳しいわけではなかったようで、店員さんを呼んで普通に使えてカメラの性能の良いものを選んでもらった。
スマホは一時間までかからないが、手続きを待っていただければすぐに使えるようになるそうで終わるまで待つことにする。
手続き終了後、何を思ったか美樹先輩は急に店員さんに話しかけにいった。俺と遠藤先輩は何事かと思っていると、美樹先輩は
「初スマートフォンということでまだなにも写真がありませんから、ここで3人で並んだ写真を撮ってもらおうと思います」
まさかそんな事を考えていたとは思わず驚いてしまったが、ショップ内という場所ではあるが、美樹先輩は俺と遠藤先輩を引っ張っていき隅の方に3人で並ぶ。
「行きますよ? 」
店員さんが美樹さんのスマホを掲げて声をかけてくる。美樹先輩が真ん中で右隣に俺、左隣に遠藤先輩。そしてカシャッと取られる初写真。
スマホ選びも初共同作業だったかもしれないけれど、この写真撮影が本当の意味での初の共同作業だったのかもしれない、後々俺はそう思うのだった。
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