第414話麗は葉子を一生のパートナーにしたいと思うけれど

麗が高輪の家に戻ると葉子は次のお世話係の話。

「お屋敷で裁縫のお仕事をされている可奈子さんになります」


麗は、頷く。

「はい、お任せしてあるので」と、答えも麗らしくシンプルなもの。


ただ、葉子は、少し寂しそうな顔。

「残り少なくなってしまいまして」


麗が葉子を軽く抱くと、葉子は麗の胸に顔を埋める。

「今までの皆、麗様のお世話をするのに憧れて、楽しそうで」

「終わると、気が抜けたように、うちもそうなるのかなと、不安で」

麗は葉子の背中をなでる。

「夏休みになれば、毎日でも、全員一緒に」


麗が腕を解くと葉子は残念そうな顔。

「いい感触でしたのに」

しかし、すぐに顔を赤くする。

よほど恥ずかしかったらしい。


麗は話題を変えた。

「不動産の麻友さんから連絡がありました」

「跡地の計画の件で」

葉子はすぐに真顔に戻る。

「はい、麗様のご都合などをお伝えしました」


「宿泊研修施設のモデルプランを数種類考えてくれるとのこと、次に土曜日に話を聞く予定に」

葉子

「はい、それは麗様のご都合で」

「今後のこともあるので、秘書の葉子さんもご一緒に」

葉子の顔が、また紅潮する。

「はい・・・喜んで・・・」


その後は、そのままリビングで検討会が始まった。


「全て麻友さんにお任せも、あまりにも芸がないと思うので」

「使うのは我々、それも何十年にもなります」

葉子

「その我々って、おっしゃり方、とても好きです、元気が出ます」

「ラグビーのワンチームってありましたよね、そんな感じ」

葉子

「それも好きです、気が合いますねえ、麗様」


麗は大きめのノートをテーブルに置く。

「具体的な話にしましょう」

「敷地が、100坪くらいかな、あの跡地だけで」

「宿泊の部屋の数と食堂、研修施設」

「三階になればエレベーターも」


葉子はきれいな字で、麗が口に出したことを、次々に書いて行く。

葉子からも提案があった。

「来週、お世話係たちでも、考えてみます」


麗は言葉を追加した。

「お世話係さんたちのご家族を招きたいとも思うので」

葉子は、またうれしそうな顔。

「何か、ワクワクしてきました」

「麗様と一緒だと、いろんなことができそうで」

「やはり防音は必要かな」

葉子

「そうですね、音楽も楽しめます」

「いろんな研修ができます」

「お屋敷にも音楽室ありますが、その本番の前に練習もできます」


麗は葉子と話をしながら思った。

「葉子さんと結ばれたら、楽だろうな、とにかく考え方が近い」

「一生のパートナーにしたい、離したくない」

「しかし結婚は難しい」

「やはり関係筋のお嬢様とは・・・『身分が違う』と、人前でも陰でも言われるのが目に見えている」

「苦しませたくもない、こんな素敵な人を」

麗は、「身分の格差」を絶対視する京社会を、実に悔しく感じている。

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