第341話九条家で大歓待を受ける蘭

大旦那も五月も、蘭をやさしく、笑顔で受け入れた。


珍しく大旦那は相好を崩す。

「まあ、べっぴんさんや、可愛らしい」

「いつのまに、こんなに、天女さんみたいやなあ」


五月はリビング入り口から蘭の手を握る。

「蘭ちゃん、久しぶりや、可愛いわぁ・・・ほんま」


蘭は、やはり緊張する。

「お久しぶりにございます」

「いろいろと、ご心配をいただき、心より・・・」


しかし、大旦那が蘭の言葉を止めた。

「構わん、孫みたいなもんや」

「蘭が元気で喜んでくれれば、それで良しや」


蘭は麗に目で促され、ようやくソファに座る。

それでも、やはり緊張するのか、麗の隣にピッタリと座り、離れられない。


大旦那は麗の顔を見た。

「昨日の晩、麗が詩織と話をしている時間、奈々子も来とる」

「ああ、晃と一緒に」

「麗も詩織の世話で必死やから、声はかけんでおいた」


麗は、すぐに納得。

確かに、そのほうがいいかな、と思う。

麗は九条家の後継として動き始めているし、「育ての母」とは言え、奈々子を迎え入れる時には、大旦那の横に座るのが筋。

しかし、それでは、どうして違和感がある。

様々な感情があったにしても、「長年の母」を、「上から目線」で見下ろすことは、ためらわれる。

そのうえ、感情の起伏が激しい詩織との話を中座して、大旦那と奈々子の前に顔を出すのも、得策ではなく、不自然と思う。


五月は、蘭に笑いかける。

「とにかく麗様は、女子にモテモテで」

「それから、京の人気もな」


茜は蘭をからかう。

「取られてしもうた?」

「文句も言えんな」


蘭は、顔が真っ赤。

やはり、緊張、何も言葉が出ない。


そうこうしているうちに、玄関が騒がしい。

三条執事長が小走りにリビングに来た。

「関係筋のお嬢様が全員、おそろいです」

「小型バスにて、下鴨神社に、それから隆さんの病院に」


麗は、蘭に目配せ、一緒にソファから立ち、大旦那と五月に挨拶。

「それでは、参拝などしてまいります」

そのまま、リビングを出て、茜も続いて玄関まで出ると、またしても大騒ぎ。

ただ、騒ぐのは関係筋の娘たちで、その対象は蘭だった。


「あーーー!蘭ちゃん?」

「ほーー!グラマーさんや、はちきれそうや」

「目がクリクリとして可愛いわぁ・・・」

「妹にしたいわぁ・・・」

「ドレスも似合うかも、スタイルが」


そんな話が続くので、蘭はますます真っ赤。

そのまま関係筋の娘たちに囲まれている。


麗には、意外なことなので、首を傾げていると茜が耳元で囁く。

「恵理と結がいなくなった効果や、こんな大騒ぎができるのも」

「華やかで面白い」


玄関先での大騒ぎが気になったらしい。

結局、大旦那と五月も玄関に出てきてしまった。

そして大旦那が麗に、封筒を渡す。

「これで、蘭に可愛い服を」

その言葉が聞こえた蘭は、目を潤ませる。

そして、また玄関先は、お世話係たちも出てきて、大騒ぎになってしまった。

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