第285話麗の九条家屋敷での「湯女拒否」は変わらないけれど

麗と茜は、屋敷に戻った。

その後は、少し間をおいて和風夕食。

話題は麗の予定と土曜日の理事会など。


「まずは明日からの高輪での新しい生活をはじめること」

「授業出席は当たり前、高橋先生と出版の話し合いもあります」

大旦那

「理事会は任せろ、顔見せでかまわん」

「麗の評判はすでに高い」

「何より、高輪での生活に慣れることや」

五月

「麗ちゃんは高輪に土地勘は?」

「品川に近い程度しか知らなくて、歩いたこともなく」

「まあ、高級住宅街というのは知っとるけれど」

「姉さま、落ち着いたら泊まりに来る?」

茜はうれしそうな顔。

「そやなあ、たまには江戸見物も」


そんな状態で、夕食は和やかに終了。

麗は自分の部屋に戻り、少しして風呂に入る。

ただし、佳子の湯女は、直接に断った。

「九条屋敷では、葉子さんも、直美さんも、湯女をしていないこと」

「特別扱いは、また問題が出る可能性がある」


佳子は、一瞬落胆、しかし九条家内、お世話係内の問題を避けたいとの意識は、麗とも共通。

佳子も、麗の言葉に納得した。

「わかりました、残念ですが」

「その分・・・高輪で、たっぷり」


麗が、少し頭を下げて歩き出そうとすると、佳子が麗の袖をつかむ。

「麗様、後でお部屋に伺ってもよろしいでしょうか」

「あの・・・会計のお勉強を」


麗は、これには断りようがない。

「わかりました、それは助かります」

「風呂を出た後、お待ちしております」


そんな会話の後、麗は大風呂の中、一人で湯舟につかる。

「何とかやりすごせた」

「こうでもしないと、一人になれない」

「佳子さんには可哀想な気もするけれど、一度決めたこと、簡単に破るわけにはいかない」


疑問もある。

「どうして湯女をしたがるのか」

「恥ずかしいとか、その感覚はないのか」

「少なくとも、俺は直視できない」

「直視もされたくはなく」


「性行為」が目的なのか、とも考える。

しかし、それを目的にする理由も、わからない。

「お世話係として、俺からの好感度を高め、関係を深め、家の安泰をはかるのか」

「まるで、中国の後宮みたいだ」

「それにしても、この時代、あり得ない話だ」

結局、麗はいろいろ考えるけれど、結論は出ない。



一方、麗から「湯女」を拒否された佳子は、お世話係たちが集まる部屋に戻った。

佳子は残念な顔。

「失敗しました、誰に対しても拒否と」

葉子

「原則は曲げないと、それはわかる」

直美

「都内では、最初恥ずかしがっていたけれど、後は大丈夫やった」

「素直に、入れてくれた」

美幸

「特定の人にすると、嫉妬が生まれると、そう思われとる」

涼香が他のお世話係たちを見て、含み笑い。

「そうなると特定にしなければ、どうなります?」

可奈子は意味不明。

「それは?お世話係の順番を崩すのでは?」

麻友が、涼香の意図に、少し気がついた。

「涼香さん、もしかして・・・特定にできない状態って」

奈津美の顔が赤くなった。

「もしかして・・・全員で一緒にお風呂?」


その瞬間、お世話係たちは、大笑いやら、計画やら。

「麗様の恥ずかしそうな顔が見たいなあ」

「うちらはともかく、麗様が真っ赤になる」

「どうやって麗様をお風呂に引きずり込むか」

「有無を言わせず?」

「はぁ・・・ドキドキしてきた・・・」

「後は計画やね、おもろいなあ」


お世話係たちも、結局は和やかな話になっている。












  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る