第229話麗の考えで、また周囲が動き出す。

高橋佐保は、麗から鎌倉香料店の取材原稿をメールで受け取り、感心しきり。

「基本的には定番の香料の説明なんだけど、さりげなく歴史の故事を書いてある」

「言葉遣いが典雅・・・しかし無駄がない」

「店の名前も九条香料店か・・・それだけでも高級感が出る」

「香料のつけ方、マナーも細か目に書いてある」

「へー・・・定例的なお香の講座も開催するのか、それも面白いかな」


本当にうれしかったので、九条文化財団への転職も含めて姉の麻央に連絡をする。

佐保

「麗君に、感謝してもしきれないよ」

麻央

「それは、私もそう」

「親も日向先生も言っていたよ」

「表情には出さないけれど、いろいろ考えて、動いてくれる」

「実は人を集めて動かす才能がある子だよ、本人の意識以上に」

佐保

「また、家に泊まってもらいたいなあ」

「お礼もしたいし」

麻央は、少し笑う。

「麗君が欲しくなったの?」

佐保は否定しない。

「うん、本当に欲しい、押し倒しても抱きたい」

麻央

「何か、口実を考えようかな」

「共同研究を深めるとか」

佐保も必死に考える。

「ねえ、三人で共著しない?私が写真を撮るから」

麻央は、また笑う。

「あのね、佐保、麗君は、今後はスポンサーなの」

「少々の敬意は必要になるよ」


麻央との電話を終えて、佐保は思った。

「ほんと・・・ますます欲しいなあ」

「あの麗君を思いっきり責めたい」

「ただの男と女として、全てを忘れて・・・」

麻央は、そんな思いばかりが膨らみ、眠れぬ夜を過ごすことになった。



吉祥寺の料亭香苗に、鎌倉香料店の瞳から「かくかくしかじか」の電話が入った。

「まあ、麗様は、福の神や」

「ドンと肩の力が抜けた」

香苗

「ええことや、バラバラに仕事しているより、一つの九条文化財団の中で」

「香料店も京文化、日本文化の発信やもの」

「その財務基盤を強化して、安定的にするのも、大切なことや」

「香料講座もって言われたよ、売るばかりで気がつかんかった」

「ネット販売も考えているみたいや」

香苗

「ええと思うよ、これからの時代、二つとも欠かせん」

「それでな、時代和菓子、あれは面白い、この店でも使いたい」

「亭主も興味津々や」

「まあ、いつかは、うちの店にも九条財団入りの話があると思うよ」

「ああ、それもおもろいなあ、協力します」

「それとな、美里が急にやる気を出して、勉強し始めたよ」

「香料と経営まで」

香苗

「さすがやなあ、美里ちゃんは、賢い」

「麗ちゃんの気持がわかったんや」

「それに比べて・・・桃香は・・・感情ばかりで・・・」

「うーん・・・それも桃ちゃんの、いいとこや」

「でも、しっかり話せばわかると思うよ」


瞳との電話を終えて、香苗は考えた。

「この料亭も文化財団に入った場合・・・」

「京文化、和風文化の発信を強化する面が強くなる」

「うちの店も、料理教室とか・・・」

「それに加えて、作法教室も出来るかなあ」

「その際に、鎌倉から香料の講師で、瞳を呼んで」

「はぁ・・・おもろしろい」

「さすが、麗ちゃんやな、周囲がいつの間にか、動き出す」

そこまで考え、香苗は桃香を呼び出すことにした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る