短編詰め合わせ

黒之主と楓

黒之主:"時を操る"と一口に言っても色々な手段がある。万能に思えるだろうが以外と制約の方が多い。

楓:………ね、黒之主。その話長い？

黒之主:別に眠いなら聞かなくていいぞ。楓に話している訳ではない。

我の力は時間移動。直接過去に行き出来事に干渉して現在を変える。

何ができるか…卵を例えて話すか。

茹で卵を生卵に戻すことは可能だ(卵を茹でる行為を阻止すればいい)

腐った卵を新鮮な卵に戻すことは不可能だ(時間経過で変化するのでどうもできない)

過去を変えたとき、未来が好ましくない方向に傾くこともある。だから現在に戻るとき…"変化していない現在"に戻るのか否かを選べる。創作で世界線と形容されるそれだな。

過去に干渉するやり方はリスクも大きい。複数の原因や偶然が重なって起きた出来事は完全に回避するのは難しい………

(それに、運命られた出来事であれば尚更。少々干渉した程度では原因が変わって結果は変わらずということも常だ)

時を操ると聞いて人の子がまずイメージするであろう"物体の時間のみ戻したり進める力"……我は使えぬが実在する。

先ほどの卵で例えれば………

腐った卵を新鮮な卵に戻すことは可能(腐る前まで時を巻き戻す)

時間を待たずして茹で卵を作る事は可能(ただし環境を整える必要がある。茹で卵なら湯に浸ければよい、そのまま時間を進めるだけ)

この力の話をすればほぼ確実に問われるのが"死者を蘇らせられるか？"という疑問。

断言するが不可能だ。それは時間を操る分野ではどうもできない。

同じく孵化や妊娠中の命を時間操作で産ませられるか？これは可能。病気や怪我の治療目的で巻き戻すのは…状況による。

先天性の病気なら不可能だ。(無論長期間かけてなった慢性病も然り)勘違いしてはいけないが…"起きる前"に戻るだけだ。

………何が言いたい？か。怪我はともかく病気は"起きるべくして起きる"から、身体の時間を戻してもまたその時がくれば発症する。時間稼ぎにしかならない。

例え時間移動で過去に干渉しようが完全に防ぐ事は不可能。ま、例え神の言葉でも絶対等存在せぬが。

攻撃手段として時間停止が時折使われる。動けない間に攻撃を叩き込み戦闘不能に追い込むやり方や、物体の時を止め力を溜めて解き放つやり方。

同じように聞こえるだろうが時間の止め方が根本的に違う。

前者は思考を止めるのみ。つまり身体の時間は動き続けている故に受けた攻撃は即時反映される。

後者は…物体そのものの時間が止まっている。受けた攻撃が反映できず停止中は例え破壊してしまう威力であっても無傷で済む。(その分解放した時の威力は跳ね上がるが)

我がもし使うなら前者だ。そもそも物体の時間のみを操る力は無いからな。

楓:卑怯じゃない？動けないのに一方的に攻撃するとか……

黒之主:………知るか。そもそも神に卑怯も何もあるのか？身のほど知らずに情を掛けるほど我は甘くない。

楓:(何でこんな神＜ひと＞が力持ってるんだろ……。誰が信仰してるんだか。)

黒之主:不満そうな表情＜かお＞だな、楓。我はまだましな方だぞ…神の中ではな。

楓:それ、自分で言っちゃうんだ…

黒之主:当然だ。神を名指しで呼び捨てにする奴など消されても文句は言えぬぞ？

楓:そもそも黒之主って本当に神様なの？影薄いだけで人間じゃないの？

黒之主:………さらりと大問題発言をしてくれるな、楓よ。貴様でなければ時間停止の刑だ…